消費者金融を利用するにあたって、返済が遅れた場合や滞った場合の「取立て」が気になる人もいるのではないでしょうか?

一時期、消費者金融による行き過ぎた取立てがニュースに取り上げられたこともありました。

ただ、消費者金融は、貸金業法という法律よって、悪質な取立てをすることは禁止されています。

ざっくりまとめ

  • 貸金業法により、消費者金融による悪質な取立ては禁止されている
  • 悪質な取立てをした消費者金融は処分される
  • 不当な取立てで精神的な打撃を受けた場合、消費者金融に対し、損害賠償の請求ができる場合もある

【貸金業法で禁止】借金の「取立て」でやってはいけないこととは?

2024年8月24日時点で施行されている貸金業法には、第二十一条に「取立て行為の規制」という内容で、以下の記載があります(簡単にまとめた内容は後述します)。

(取立て行為の規制)
第二十一 条貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
二 債務者等が弁済し、又は連絡し、若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において、その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに、前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
三 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
四 債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。
五 貼り紙、立看板その他何らの方法をもつてするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
六 債務者等に対し、債務者等以外の者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することを要求すること。
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
八 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士、弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
十 債務者等に対し、前各号(第六号を除く。)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること。
2 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、債務者等に対し、支払を催告するために書面又はこれに代わる電磁的記録を送付するときは、内閣府令で定めるところにより、これに次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 貸金業を営む者の商号、名称又は氏名及び住所並びに電話番号
二 当該書面又は電磁的記録を送付する者の氏名
三 契約年月日
四 貸付けの金額
五 貸付けの利率
六 支払の催告に係る債権の弁済期
七 支払を催告する金額
八 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
3 前項に定めるもののほか、貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たり、相手方の請求があつたときは、貸金業を営む者の商号、名称又は氏名及びその取立てを行う者の氏名その他内閣府令で定める事項を、内閣府令で定める方法により、その相手方に明らかにしなければならない。

※引用元:貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号)

以上の内容をもう少しわかりやすくまとめると、貸金業法で禁止されている悪質な取立ては、下記のとおりです。

  • 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯(21:00~8:00)に、借主等に電話をかけたり、FAXを送信したり、借主等の居宅を訪問すること
  • 借主等が弁済する時期、連絡する時期、連絡を受ける時期を申し出た場合、それ以外の時間に正当な理由なく借主等に電話、FAX送信、居宅を訪問すること
  • 正当な理由がないのに、借主等の勤務先、その他の居宅以外の場所に電話、電報、FAX送信、訪問すること
  • 張り紙、立て看板、その他の何らかの方法で、借主の借入に関する事実、その他借主等の私生活に関する事実を借主以外の者に明らかにすること
  • 借主等に対し、他の貸金業を営む者からの金銭の借入、その他これに類する方法により、貸付の契約に基づく債務の弁済金を調達することをみだりに要求すること
  • 借主以外の者に対し、借主に代わって債務を弁済することをみだりに要求すること
  • 借主が、債務の処理を弁護士等(弁護士法人、司法書士、司法書士法人)に委託、または、その処理のために必要な裁判所における民事事件に関する手続きをとり、弁護士等または裁判所から書面によりその旨の通知があった場合に、正当な理由がないのに、借主に対し電話をかけたり、電報を送達したり、FAXを送信したり、訪問したりする方法で、債務の弁済を要求し、これに対し借主等から直接要求しないように求められたにもかかわらず、さらにこれらの方法で債務の弁済を要求すること

「取立て」というと、ドラマや映画などでもみるような怖いシーンや悪質な内容を思い浮かべる人がいるかもしれません。しかし、日本では、貸金業法という法律で、行ってはいけない取立てについて定められているのです。

消費者金融が悪質な取立てをした場合には処分が下される

悪質な取立てに該当する行為を行う業者について、貸金業法では以下のとおり規定されています。

債権の取立をするにあたり、第21条(取立行為の規則)の規定に違反したときには、内閣総理大臣または都道府県知事は、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命ずることができる

悪質な取立てをした消費者金融は、業務停止の処分が下される場合があります。とくに取立ての行為がひどいときには、その業者の登録を取り消さなければならないとも定められています。

また、刑法に触れるような行為があった場合には、刑法の規定により刑事処分がなされます。

  • 【借主が怪我をさせられた場合】傷害罪(刑法204条)
    人の身体を傷害した者は、25年以下の懲役または50万円以下の罰金もしくは科料
  • 【借主が暴力を振るわれた場合】暴行罪(刑法208条)
    暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
  • 【借主が脅迫を受けた場合】脅迫罪(刑法222条)
    生命、身体、自由、名誉または財産に対し、害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 【借主が逮捕・監禁された場合】傷害罪(刑法204条)
    不法に人を逮捕し、または監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する

以上のように、悪質な取立ては厳しく禁止されており、貸金業法に違反するような取立てをした消費者金融は、業務停止や登録取り消しといった行政処分、あるいは、懲役・罰金などの刑事罰を受けることになります。

したがって、債務者(借主)や保証人あるいはその家族などが、消費者金融により違法な取立てを受けた場合には、監督行政庁に対しては行政処分を求める申し立てができます。

また、警察や検察庁に対して告訴・告発をして刑事処分を求めることもできます。

もし、借金の取立てにあたり、法律に違反するような悪質な取立てをする業者がいた場合には、断固とした態度で臨むことが大切です。

貸金業法に違反しない取立ての流れ

消費者金融の支払いを滞納すると、延滞の督促のためにまずは電話や郵送で連絡が来ます。それでも無視していた場合には裁判や差し押さえが行われます。

  1. 【返済期日の翌日】
    遅延損害金が発生
  2. 【返済期日の数日後】
    消費者金融から、督促の電話や手紙がくる
  3. 【返済期日の2ヶ月~3ヶ月後】
    ブラックリストに掲載され、残額を一括請求される
  4. 【返済期日の3ヶ月後以降】
    訴状が届き、給与や財産の差し押さえが行われる

【取立てされる前に】消費者金融で借金を返せない場合はどうする?

滞納しそうな場合には、次のような対応で対処することをおすすめします。

消費者金融で滞納しそうな場合の対処法

  • 滞納・延滞がわかった時点で早急に電話で相談する
  • どうしても返済が難しい場合は債務整理を行う

消費者金融で滞納して悪質な取立てが行われないからと、そのまま放置してはいけません。催促の連絡を無視し続けると、勤務先への電話連絡や、ブラックリストの掲載、裁判や差し押さえなどが発生します。

どうしようもない状態に陥らないためにも、困ったときには法律家や専門家などのプロに早めに相談することもおすすめします。

悪質な取立てがあった場合はどうする?

悪質な取立てがあった場合の対策について紹介しておきます。

ここで紹介するのは次の2つのケースです。

  • 債権の取立てで業者に暴力をふるわれた場合
  • 貸主から「詐欺で告訴するぞ」と言われた場合

債権の取立てで業者に暴力をふるわれた場合

刑法の暴行罪(208条)が成立します。また、その業者は貸金業法の取立行為規制(21条1項)にも違反することにもなります。

そのため、借主は取立て者を上記の罪で警察や検察庁に刑事告訴することができます。監督行政庁に対しては、暴力的な取立てを行った業者の業務停止などの行政処分の申し立てをすることもできます。

さらに、不法行為による損害賠償などの民事手続きをとることもできます。

貸主から「詐欺で告訴するぞ」と言われた場合

実際は告訴をするつもりはなくても、債権を回収するために「返さなければ詐欺罪で告訴する」と借主を脅している場合があるかもしれません。しかし、こういった発言は気にする必要はありません。

問題になるのは、借主が消費者金融から借金をした時点で、もし返済する気もないのに借りた場合に詐欺罪にあたるかどうかです。

ただ、返済する気はあったが、結果的に払えなくなったというケースが多く、この場合は詐欺罪にはあたらないと考えられています。これは、返済のために他の業者から新たな借金をするような場合でも同様です。

また、あまりにも言い方がひどく、違法な取立てとなる場合には、消費者金融に対して損害賠償の請求をすることも可能と思われます。

不当な取立てにより、精神的な打撃を受けた場合には、貸主に対して損害賠償の請求ができる場合もあります。

民法709条には「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される権利を侵害した者は、これによって生じたる損害を賠償する責任を負う」と規定されています。

つまり、貸主の不当な債権取立てにあい、精神的なダメージを被った場合には慰謝料や損害賠償の請求ができるということです。

悪質な取立てで過去に損害賠償が認められたケース

不当な取立てに対する損害賠償の請求を認める判決はいくつか出ています。

ただし、悪質な取立てに対しては、損害賠償の請求により対処するのも1つの方法ですが、不法行為にあたるかどうかの判断は、専門家である弁護士に相談するのがよいでしょう。

【ケース1】大阪地裁・昭和55年2月17日判決

債権取立てで業者が債務者の夫の工場の前で「女房の借りた金を返せ」と大声で叫んだり、玄関のドアに「公告 貸金43,000円を支給返せ」と買いた催告書を貼り付けた。
 ⇒裁判所は違法な行為として、慰謝料50万円を認めた。

【ケース2】奈良地裁・昭和60年9月6日判決

貸金業者が債務者の上司等に債務者への貸金の事実を架電したり、面会を求めたりした。
 ⇒裁判所は違法な行為として、慰謝料80万円を認めた。

【ケース3】京都右京簡裁・平成7年4月28日判決

支払義務のない債務者の親族宅を訪問し「請求権がある」などといって親族を困惑・畏怖させ、「確約書」をとり、債務支払いの約束をさせた。
 ⇒裁判所は債権者の貸金請求を棄却し、債務者の親族に慰謝料10万円を認めた。

また、次のような取立てでの違法な要求は拒否できます。

白紙委任状と印鑑証明書を要求された

返済が滞った場合に、消費者金融から白紙委任状と印鑑証明書を要求されても、絶対に応じてはいけません。

もし、白紙委任状と印鑑証明書を渡すと、不動産に抵当権を設定したり、公正証書を作成するために使用されます。

公正証書を作成されれば、裁判をしないで直ちに強制執行をして、給料・家財道具などを差し押さえることが可能になります。

また、白紙委任状に業者が勝手に都合のよい事項を記入して、借主に著しく不利な内容の公正証書を作成する可能性があり、思わぬ不利益を被ることもあるでしょう。

もし、契約の際に要求する消費者金融があれば、このような業者からは絶対に借りないことです。

貸金業法20条で、業者が委任状を取得することは制限されており、違反した場合には行政処分や罰則が科せられます。

クレジットカードを担保に要求された

返済が滞ったときに、クレジットカードを担保に取る悪質業者もいます。

しかし、クレジットカードを担保に金銭を貸し付ける行為は、割賦販売法で禁止されています。

また、返済が滞ったときに、クレジットカードを使用して返済に充てさせることは、貸金業法21条6項にも違反しています。

生活保護受給カードを担保に要求された

貸付をする際に生活保護受給カードを担保に取ることは、法律で禁止されています。(生活保護法59条)

国民年金や労災保険年金などの年金を担保にすることも禁止されています。

まとめ

上記のように、貸金業法では、債務者は悪質な取立てからは保護されています。

消費者金融の借り入れに対しては、当然きちんと返済していくべきですが、ドラマやマンガの影響で消費者金融の取立てに対して、誤った怖いイメージを持つ必要はありません。