消費者金融を利用するにあたって、返済が遅れた場合や滞った場合の「取り立て」が気になる方もいるのではないでしょうか?
一時期、消費者金融による行き過ぎた取り立てがニュースに取り上げられたこともありました。
ただ、消費者金融は、貸金業法という法律よって、悪質な取り立てをすることは禁止されています。
ざっくりまとめ
- 貸金業法により、消費者金融による悪質な取り立ては禁止されている
- 悪質な取り立てをした消費者金融は処分される
- 不当な取り立てで精神的な打撃を受けた場合、消費者金融に対し、損害賠償の請求ができる場合もある
貸金業法で禁止されている悪質な取り立て
貸金業法で禁止されている悪質な取り立ては、下記のようなものです。
- 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯(21:00~8:00)に、借主等に電話を掛けたり、FAXを送信したり、借主等の居宅を訪問すること
- 借主等が弁済する時期、連絡する時期、連絡を受ける時期を申し出た場合、それ以外の時間に正当な理由なく借主等に電話、FAX送信、居宅を訪問すること
- 正当な理由がないのに、借主等の勤務先、その他の居宅以外の場所に電話、電報、FAX送信、訪問すること
- 張り紙、立て看板、その他の何らかの方法で、借主の借入に関する事実、その他借主等の私生活に関する事実を借主以外の者に明らかにすること
- 借主等に対し、他の貸金業を営む者からの金銭の借入、その他これに類する方法により、貸付の契約に基づく債務の弁済金を調達することをみだりに要求すること
- 借主以外の者に対し、借主に代わって債務を弁済することをみだりに要求すること
- 借主が、債務の処理を弁護士等(弁護士法人、司法書士、司法書士法人)に委託、または、その処理のために必要な裁判所における民事事件に関する手続きをとり、弁護士等または裁判所から書面によりその旨の通知があった場合に、正当な理由がないのに、借主に対し電話を掛けたり、電報を送達したり、FAXを送信したり、訪問したりする方法で、債務の弁済を要求し、これに対し借主等から直接要求しないように求められたにもかかわらず、さらにこれらの方法で債務の弁済を要求すること
では、もし消費者金融が悪質な取り立てをした場合には、どのような処分がされるのでしょうか?
貸金業法では、「債権の取立をするにあたり、第21条(取立行為の規則)の規定に違反したときには、内閣総理大臣または都道府県知事は、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命ずることができる」と規定されており、悪質な取り立てをした消費者金融は、業務停止の処分が下される場合があります。
さらに、とくに取り立ての行為が、ひどいときにはその業者の登録を取り消さなければならないと定められています。
また、刑法に触れるような行為があった場合には、刑法の規定により刑事処分がなされます。
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【借主が怪我をさせられた場合】傷害罪(刑法204条)
人の身体を傷害した者は、25年以下の懲役または50万円以下の罰金もしくは科料 -
【借主が暴力を振るわれた場合】暴行罪(刑法208条)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 -
【借主が脅迫を受けた場合】脅迫罪(刑法222条)
生命、身体、自由、名誉または財産に対し、害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金 -
【借主が逮捕・監禁された場合】傷害罪(刑法204条)
不法に人を逮捕し、または監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する
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【借主が怪我をさせられた場合】傷害罪(刑法204条)
以上のように、悪質な取り立ては厳しく禁止されており、貸金業法に違反するような取り立てをした消費者金融は、業務停止や登録取り消しといった行政処分、あるいは、懲役・罰金などの刑事罰を受けることになります。
したがって、債務者(借主)や保証人あるいはその家族などが、消費者金融により違法な取り立てを受けた場合には、監督行政庁に対しては行政処分を求める申し立てができます。
また、警察や検察庁に対して告訴・告発をして刑事処分を求めることもできます。
もし、借金の取り立てにあたり、法律に違反するような悪質な取り立てをする業者がいた場合には、断固とした態度で臨むことが大切です。
悪質な取り立ての具体例と対応策
債権の取り立てで業者に暴力をふるわれた場合
刑法の暴行罪(208条)が成立します。
また、その業者は貸金業法の取立行為規制(21条1項)にも違反することにもなります。
そのため、借主は取り立て者を上記の罪で警察や検察庁に刑事告訴することができます。
また、監督行政庁に対しては、暴力的な取り立てを行った業者の業務停止などの行政処分の申し立てをすることもできます。
さらに、不法行為による損害賠償などの民事手続きをとることもできます。
貸主から「詐欺で告訴するぞ」と言われた場合
実際は告訴をするつもりはなくても、債権を回収するために「返さなければ詐欺罪で告訴する」と借主を脅している場合があるかもしれません。
しかし、こういった発言は気にする必要はありません。
問題になるのは、借主が消費者金融から借金をした時点で、もし返済する気もないのに借りた場合に詐欺罪にあたるかどうかです。
ただ、返済する気はあったが、結果的に払えなくなったというケースが多く、この場合は詐欺罪にはあたらないと考えられています。
これは、返済のために他の業者から新たな借金をするような場合でも同様です。
また、あまりにも言い方がひどく、違法な取り立てとなる場合には、消費者金融に対して損害賠償の請求をすることも可能と思われます。
不当な取り立てにより、精神的な打撃を受けた場合には、貸主に対して損害賠償の請求ができる場合もあります。
民法709条には「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される権利を侵害した者は、これによって生じたる損害を賠償する責任を負う」と規定されています。
つまり、貸主の不当な債権取り立てにあい、精神的なダメージを被った場合には慰謝料や損害賠償の請求ができるということです。
過去に損害賠償が認められたケース
不当な取り立てに対する損害賠償の請求を認める判決はいくつか出ています。
ただし、悪質な取り立てに対しては、損害賠償の請求により対処するのも1つの方法ですが、不法行為にあたるかどうかの判断は、専門家である弁護士に相談するのがよいでしょう。
【ケース1】大阪地裁・昭和55年2月17日判決
債権取り立てで業者が債務者の夫の工場の前で「女房の借りた金を返せ」と大声で叫んだり、玄関のドアに「公告 貸金43,000円を支給返せ」と買いた催告書を貼り付けた。
⇒裁判所は違法な行為として、慰謝料50万円を認めた。
【ケース2】奈良地裁・昭和60年9月6日判決
貸金業者が債務者の上司等に債務者への貸金の事実を架電したり、面会を求めたりした。
⇒裁判所は違法な行為として、慰謝料80万円を認めた。
【ケース3】京都右京簡裁・平成7年4月28日判決
支払義務のない債務者の親族宅を訪問し「請求権がある」などといって親族を困惑・畏怖させ、「確約書」をとり、債務支払いの約束をさせた。
⇒裁判所は債権者の貸金請求を棄却し、債務者の親族に慰謝料10万円を認めた。
また、次のような取り立てでの違法な要求は拒否できます。
白紙委任状と印鑑証明書を要求された
返済が滞った場合に、消費者金融から白紙委任状と印鑑証明書を要求されても、絶対に応じてはいけません。
もし、白紙委任状と印鑑証明書を渡すと、不動産に抵当権を設定したり、公正証書を作成するために使用されます。
公正証書を作成されれば、裁判をしないで直ちに強制執行をして、給料・家財道具などを差し押さえることが可能になります。
また、白紙委任状に業者が勝手に都合の良い事項を記入して、借主に著しく不利な内容の公正証書を作成する可能性があり、思わぬ不利益を被ることもあるでしょう。
もし、契約の際に要求する消費者金融があれば、このような業者からは絶対に借りないことです。
貸金業法20条で、業者が委任状を取得することは制限されており、違反した場合には行政処分や罰則が科せられます。
クレジットカードを担保に要求された
返済が滞ったときに、クレジットカードを担保に取る悪質業者もいます。
しかし、クレジットカードを担保に金銭を貸し付ける行為は、割賦販売法で禁止されています。
また、返済が滞ったときに、クレジットカードを使用して返済に充てさせることは、貸金業法21条6項にも違反しています。
生活保護受給カードを担保に要求された
貸付をする際に生活保護受給カードを担保に取ることは、法律で禁止されています。(生活保護法59条)
国民年金や労災保険年金などの年金を担保にすることも禁止されています。
まとめ
上記のように、貸金業法では、債務者は悪質な取り立てからは保護されています。
消費者金融の借り入れに対しては、当然きちんと返済していくべきですが、ドラマやマンガの影響で消費者金融の取り立てに対して、誤った怖いイメージを持つ必要はありません。