
大学などへの進学や修学には多額の費用がかかります。教育資金が足りないとき、有力な選択肢となるのが「奨学金」と「教育ローン」です。両者は似ているところもありますが、根本的に異なるものです。では、奨学金と教育ローンはどちらがお得なのでしょうか。
この記事では、それぞれの特徴や違い、メリット・デメリット、向いている人などについて詳しく解説します。
お金の心配を軽減して心置きなく学べるよう、お得なほうを見極め、自分や家族に合った方法を選びましょう。
【結論】奨学金と教育ローンはどっちがお得なのか?
奨学金と教育ローンを比較すると、金利は奨学金の方が低いことが多く、奨学金を選ぶ方がお得だといえます。
それぞれの特徴や違いは以下のとおりです。
奨学金 | 教育ローン | |
---|---|---|
おすすめな人 |
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|
返済する人 | 子 | 親 |
申込方法 | 学校を通じて申し込む | 金融機関に申し込む |
申込時期 | 進学前もしくは在学中 | いつでも可 |
金利の目安 | 無金利~年1.3%程度(固定もしくは変動) | 年2.4%~(固定) |
※奨学金は日本学生支援機構、教育ローンは日本政策金融公庫の情報を参照
※2024年5月時点
奨学金は、教育ローンに比べて利用できる人の要件が厳しめですが、そのぶん低い金利で借りられる可能性が高いです。また、成績が優秀な場合や親の年収が低い場合などは、返済不要(給付型)の奨学金を利用できることがあります。
CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子賢司の一言コメント!
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給付型奨学金は大学の他、地方公共団体や公益財団が用意しているものもあります。利用するには要件があり、誰でも利用できるわけではありませんが、検討してみると良いでしょう。日本学生支援機構(JASSO)の公式サイトでは、さまざまな条件を指定して、奨学金制度を検索できるシステムがあります。給付型に絞って検索してみると、資格や条件、給付額なども確認できるため、ご活用ください。
奨学金の特徴
給付奨学金 | 貸与奨学金(第一種) | 貸与奨学金(第二種) | |
---|---|---|---|
特徴 | 返済不要 | 無金利で借りる | 有金利で借りる |
借入申込人 | 学生自身 | 学生自身 | 学生自身 |
申込方法 | 学校を通じて申し込む | 学校を通じて申し込む | 学校を通じて申し込む |
奨学金にはさまざまなものがありますが、最も多くの学生が利用するのが「日本学生支援機構(JASSO)」の奨学金です。JASSOの奨学金は、大きく上記の3種類に分けられます。
利用する側にとって、最も条件がよいのは給付奨学金です。しかし、成績や年収などの要件が厳しく、対象者は少ないです。第一種は給付奨学金ほど条件が厳しくなく、第二種になるとより緩和されます。
学校や自治体などが独自に運営している奨学金制度を調べて、よりよい条件で借りられる奨学金を探してみるのもおすすめです。
奨学金のメリット
- 奨学金のメリット
- 返済不要な場合もある
- 無金利もしくは低金利で借りられる
- 収入が少ない世帯でも利用しやすい
奨学金のメリットは、教育ローンよりも好条件で利用できる可能性が高い点です。返済不要で借りられるのがベストですが、それが無理でも無金利または低金利での借入が可能です。
また、奨学金は基本的に「経済的な理由で進学や修学をあきらめない」ための救済制度です。そのため、収入が少なくて通常のローンが組みにくいような世帯でも利用しやすくなっています。むしろ、年収が一定以下でないと利用できない仕組みになっていることもあります。
奨学金のデメリット
- 奨学金のデメリット
- 年収や成績など利用要件が厳しい
- 卒業後に子どもが返済していくことになるため負担がかかる
- 受験費用や入学費用の準備には使いにくい
奨学金のデメリットは、利用要件が厳しいことです。年収が高すぎたり、成績がよくなかったりすると対象外になる可能性があります。
申し込める時期や借りられる金額などのルールも細かく決められていることが多いです。また、特に人気が高い奨学金制度では利用希望者が多く、募集枠がすぐに埋まってしまったり競争率が高くなったりすることもあります。
返済不要ではない奨学金を利用することになった場合は、子どもに負担がかかる点も見逃せません。将来、子どもが結婚や出産などを考えたときに足かせになってしまうかもしれません。
CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子賢司の一言コメント!
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日本学生支援機構の奨学金は高校3年生のときにに申し込む「予約採用」と、大学などに入学してから申し込む「在学採用」があります。このうち早く受け取れる予約採用でも、奨学金を受け取れるのは、大学入学後で、手続き時期によっては5月に2か月分振り込まれる場合もあるため注意が必要です。大学入学金はまとまったお金が必要ですが、入学金の支払いは奨学金以外の方法で準備しなければなりません。
教育ローンの特徴
一般的な教育ローン | |
---|---|
借入申込人 | 親(保護者) |
申込方法 | 金融機関に申し込む |
金利 | 年2.5%~5.0%程度 |
教育ローンは、親(保護者)が子どものために利用するローンです。教育ローンには、国が提供しているものと、民間の銀行などが提供しているものがあります。
国の教育ローンの方が金利が低めですが、利用するための要件が厳しく、借りられる金額の上限が低めです。一方、民間企業が提供しているものは、借りられる金額やお金の使い道など、さまざまな点で融通が利きやすいのが特徴です。
教育ローンのメリット
- 教育ローンのメリット
- 子どもに負担をかけずに済む
- 奨学金ほど利用要件が厳しくない
- 申し込む時期や借入額、お金の使い道などの面で奨学金より自由度が高い
「子どもに借金を負わせたくない」という人もいるでしょう。教育ローンは基本的に親が返済していくものなので、貸与型の奨学金と違い、子どもの負担になりにくい点がメリットです。
また、奨学金ほど要件が厳しくないため、年収が一定以上でも成績優秀でなくても利用できる可能性が高いです。
いつでも申し込めて、借りる金額やタイミング、使い道などの選択肢が多いのも教育ローンならではです。自由度が高いので「奨学金だとちょっと……」という人でも利用しやすいでしょう。
教育ローンのデメリット
- 教育ローンのデメリット
- 奨学金より金利が高め
- 年収が低いと利用しにくい
- 在学中に利息や元金の返済が始まることが多い
教育ローンのデメリットは、金利が高めなことです。金利は利用する金融機関などによって異なりますが、通常は奨学金よりも高くなります。奨学金が「困窮している人のための救済制度」であるのに対して、(特に民間の)教育ローンは「営利目的の金融商品」なので、当然と言えば当然です。
教育ローンは審査を行って、きちんと全額返済できる可能性が高い人に貸すため、年収が低すぎると利用できない点もデメリットといえます。
また、奨学金の返済が始まるのは原則として「卒業後」ですが、教育ローンは「在学中」から返済が始まるのが一般的です。多額のお金を必要としている時期に返済もスタートすることになるので、計画的に利用したいところです。
CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子賢司の一言コメント!
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教育ローンは大きく「民間の教育ローン」と「国の教育ローン」に分かれます、国の教育ローンとは、日本政策金融公庫で取り扱っている教育一般貸付のことを指し、民間の金融機関の教育ローンよりも金利が低めに設定されています。教育ローンは奨学金と併用もできるため、奨学金だけでは教育費が足りないときや、入学金の準備などに利用できます。また奨学金は決まった時期しか申し込めませんが、教育ローンはいつでも申し込めます。審査もあるので、必要と感じたら早めに申し込んでおきましょう。
奨学金と教育ローンの返済金額の違いをシミュレーション
奨学金と教育ローン、返済金額にどれくらいの違いが出るのかシミュレーションしてみましょう。
教育資金の借入条件
- 申込金額:300万円
- 返済期間:18年
- ボーナス返済:なし
奨学金:第一種 | 奨学金:第二種 | 教育ローン | |
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適用した金利 | 0%(無利息) | 年1.0%(固定) | 年2.4%(固定) |
毎月の返済額 | 1万4,705円 | 1万6,069円 | 1万7,200円 |
利息 | 0円 | 27万8,076円 | 69万4,000円 |
返済総額 | 300万円 | 327万8,076円 | 369万4,000円 |
(参照:日本学生支援機構「奨学金貸与・返還シミュレーション」、日本政策金融公庫「返済シミュレーション」)
第一種奨学金は利息が発生しないため、借りた分をそのまま返すだけで済みます。対して、金利年1.0%の第二種奨学金になると、1か月あたり1,300円ほど、18年間トータルで28万円ほど利息がかかり、返済負担が増えます。より金利の高い教育ローンになると、その差はさらに大きくなります。
貸与型の奨学金や教育ローンは、カードローンなどと比べると金利はかなり低いといえますが、それでも返済の負担はあります。金利年1.0%の差でも、積み重なると大きいものです。教育資金を借りるなら、なるべく金利が低く、条件が合う方法を探してみましょう。
奨学金を利用するのがおすすめな人
- 奨学金を利用するのがおすすめな人
- 返済不要の奨学金を利用できる人
- 年収や成績の要件をクリアできる人
- できるだけ金利を抑えたい人
- 親に負担をかけたくない学生
奨学金を利用できる要件にあてはまる人は、奨学金を利用するのがおすすめです。特に、返済不要の奨学金を利用できる場合はなおさらです。返済が必要な場合や、利息が発生する場合でも、教育ローンよりは返済額が少なくて済む可能性が高いです。
卒業後に子自身が返済していくことになるので、進学やその後の就職に対する意欲が高い場合や、親子間でお金の話をじっくりとできる場合には特に向いているでしょう。
教育ローンを利用するのがおすすめな人
- 教育ローンを利用するのがおすすめな人
- 受験前や入学前の費用が必要な人
- 奨学金貸与の要件をクリアできない人
- 多額の資金が必要な人
- 子に負担をかけたくない親
奨学金の利用要件をクリアできない人や、「子どもには借金を負わせたくない」という人は、教育ローンを組んで親が返済していくほうが向いているでしょう。
また、教育ローンは奨学金に比べて借りられる金額の上限が高いことが多いため、医歯薬系の大学や海外留学など奨学金だけではまかなえないほど多額の教育資金が必要な場合にも役立ちます。
借りるタイミングや使い道の自由度も高いため、受験や入学に向けてまとまったお金を用意するのが難しい人にもおすすめです。
学費や生活費が足りなくなった学生は「学生ローン」がおすすめ
奨学金や教育ローンとは別に、「学生ローン」もあります。学生ローンは、学生本人が借りるためのローンで、学費など教育関連以外にも利用できるのが特徴です。急に大きな出費が発生した場合や、一人暮らしの生活費が足りなくなった場合などに役立つでしょう。
ただ、金利が年15.0%~18.0%程度と消費者金融並みに高いので、安易に利用するのはやめましょう。また、「学生ローン」という名前ですが通常、高校生以下は利用できず、18歳以上でアルバイトなどの収入がある人などに限られます。
お金が足りなくなってどうしようもないときなど、他の手段がないときに限って使うようにしましょう。
CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子賢司の一言コメント!
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当然ですがお金を借りると、それ以降、返済をしていかなければなりません。借入額が少額だと毎月の返済額も少なくて済むため、油断してしまいがちですが、利息を含めた総返返済額かなり大きくなる可能性がある点には注意が必要です。例えば年利17%の学生ローンから10万円を借りた場合、毎月の返済額は約3,560円で、利息を含めた総返済額は約12万8,000円になります。利用する前に必ず返済シミュレーションを利用して、返済していけるかどうかを確認しましょう。
※参考元:カレッヂ|返済シミュレーション
まとめ
奨学金と教育ローン、金利の面から見るとお得なのは「奨学金」です。奨学金は、年収や成績などの要件を満たせば、返済不要もしくは無金利など一般的な教育ローンにはない好条件で利用できます。
一方で、時期を問わず幅広い用途で利用しやすいなど、教育ローンならではのメリットもあります。なお、奨学金と教育ローンは、両方を同時に利用することも可能です。
双方のメリット・デメリットを理解したうえで、親子で話し合って、自分たちに合う方法を選ぶのがおすすめです。