不動産担保ローンはほかのローンに比べて借入額が大きく、借入期間は長く、金利が低いという特徴があります。
それゆえ、まとまった金額の資金を必要とする場合には、優先的に検討されるべき商品だと言えます。
不動産を所有している方にとって、その不動産の担保価値はいくらくらいなのか、また残債があるかないかなどが心配のタネとなるでしょう。
一方で、自分名義の不動産を所有してはいないけれど、親や兄弟名義、いわば他人名義の不動産を自分がお金を借りるための担保として利用できるのかどうかも、気になるところだと思います。
本稿では、他人名義の不動産を担保にして不動産担保ローンを利用する場合に、対象となる「他人」の範囲や利用時の条件、担保提供者に内緒で利用できるのかなどの諸問題を含めた注意点について、詳しくご説明いたします。
CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子賢司の一言コメント!
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不動産担保ローンを利用したくても、自分自身は不動産を持っていないので、あきらめている人がいるかもしれませんが、他人名義の不動産を担保に、不動産担保ローンを利用できる場合があります。
ただしもちろん誰の名義の不動産で良いというわけではなく、ローン申込者の2親等、あるいは3親等以内の親族であることを要件に、他人名義の不動産を担保にすることが可能な場合があります。
親族間でのトラブルを避けるために、他人名義の不動産を担保提供するときは所有者の了承を十分取り付けておくように心がけましょう。
名義の違う不動産でも不動産担保ローンは借りられるのか?
大前提として、不動産担保ローンを利用する際に担保として提供する不動産は自分名義の不動産がベストです。
しかし、他人名義の不動産を担保とすることが不可能ということではなく、実際、他人名義の不動産を担保にしてもかまわないというローン会社は少なくありません。
ただし、「他人」と言っても誰でも良いわけではなく、通常はローン申込者の2親等(配偶者、親、祖父母、兄弟姉妹、子、孫など)か、もしくは3親等(叔父、叔母、甥、姪まで)の親族または姻族という制限が設けられています。
※編集部作成
ローン申込者が法人の場合は、法人所有の不動産以外にも、代表者所有の不動産、または代表者の親族・姻族(個人の場合と同じ範囲)や、代表者以外の役員が所有する不動産も対象範囲となることが多いでしょう。
代表者以外の役員の親族が含まれることもありますが、このあたりの線引きはローン取扱業者によって違いますので一概には言えません。
ローンの利用条件書などには、担保提供者の範囲が記載されていることが多いです。検討中のローン商品がある場合は、どこまでを担保提供者の対象としているのか事前に確認しておきましょう。
なお、他人名義とは違いますが、不動産の場合には所有者が自分だけではなく、配偶者や親なども所有者になっている共有名義というものがあります。
この、共有名義の不動産については別に項目を設けてご説明しますので、そちらをご覧ください。
例:AGビジネスサポート「不動産担保ローン」の場合
父親名義の不動産を担保にしたい場合、AGビジネスサポート「不動産担保ローン」の公式サイトには以下のような記載があります。
Q.担保不動産は父親名義でも平気なの…?
A.問題ありません!物件所有者様の担保提供と連帯保証が、原則必要となります。※参照元:不動産担保ローン|【公式】AGビジネスサポート
AGビジネスサポート「不動産担保ローン」に限らず、自分名義以外の不動産を担保にする場合は、次の3点が必要です。
- 不動産所有者の同意
- 担保にする不動産への抵当権設定
- 担保不動産の所有者に連帯保証人になってもらう必要
自分名義以外で不動産担保ローンに申し込む場合、どのような条件を満たしておく必要があるかは、公式サイトなどでもしっかりと確認しておくようにしましょう。
おすすめポイント
- 契約時の事務手数料・調査料・保証料無料。
- 全国の不動産が検討可能です。
- 抵当順位不問、親族の方の物件でも検討可能。
※.上記の金利は不動産担保カードローンのもの。不動産担保ビジネスローンは、年2.49%~8.99%。
※1.個人事業主は2,000万円以下。不動産担保ビジネスローンは、100万円~5億円。
※2.不動産に根抵当権が設定されます。
※3.法人契約の場合は原則代表者の連帯保証が必要。担保提供者の連帯保証が必要な場合があります。
不動産担保ローンで自分名義以外の不動産を担保にして借りる際の注意点
他人名義の不動産を担保にして不動産担保ローンを利用する場合、それが誰の名義だったとしても3つの点が必要になります。
- 不動産所有者の同意
- 担保にする不動産への抵当権設定
- 担保不動産の所有者に連帯保証人になってもらう必要
それぞれ、詳しく説明していきます。
不動産所有者の同意が必要
よくある質問として、「所有者に内緒で担保物件にできますか?」と尋ねられることがあります。
これに関しては「不可能」というのが回答です。
反対に立場になって考えてみればわかるのですが、誰かが無断であなたの不動産を担保にしてお金を借りられたとしたら、どうなるでしょう。
返済が滞るや否や、あなたの物件は差し押さえられて競売にかけられます。
借入も滞納も知らないところで話が進んでいたとしたら、差し押さえになってようやく問題が発覚するということになります。これは大変なことです。
こういった事態を防ぐためにも、担保物件の所有者の同意は絶対に必要です。
また、次で述べる要件を満たすうえでも、実際問題、所有者に無断で担保にすることはできません。
担保にする不動産への抵当権設定が必要
不動産を担保にする場合、担保目的の不動産に抵当権(もしくは根抵当権)を設定する必要があります。
この抵当権・根抵当権の設定には、所有者の協力が欠かせません。
具体的には、登記済権利証(もしくは登記識別情報)や印鑑証明書の提出、司法書士や金融機関などが用意する抵当権設定の申請用紙に、実印での押印が必要となります。
これは担保提供者の同意なしに進めることはできません。
担保不動産の所有者に連帯保証人になってもらう必要がある
担保不動産の提供者は、所有不動産を担保にすることに同意し、抵当権の設定に協力するだけではありません。
ローン取扱業者によってはそれだけでいいというケースもあるようですが、多くの業者はそれに加えて担保不動産の所有者を連帯保証人にすることを条件としています。
連帯保証人になるということは、債務者(ローン利用者)と同じ債務を負うということを意味しますので、責任は重大です。
万一債務者が滞納した場合、債権者は債務者ではなく連帯保証人に直接返済の請求をすることが可能です。
その際連帯保証人は、「先に債務者に請求してくれ(催告の抗弁権)」と言ったり、「債務者には返済資力があるはずだから調べろ(検索の抗弁権)」と言ったりすることはできず、返済を余儀なくされます。
そして、返済できなければ担保不動産を差し押さえられることになります。
担保提供している時点で最悪差し押さえられる点は同じではないのか、と思われるかもしれません。
それはその通りなのですが、連帯保証の場合には担保不動産以外の財産に関しても差し押さえられる可能性があるのです。つまり、連帯保証人になるほうが責任が重くなるということです。
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連帯保証人は保証人よりも責任が重くなります。 連帯保証人には、本文中にもある催告の抗弁権や、検索の抗弁権がないことに加え、分別の利益もありません。 分別の利益とは保証人が複数いる場合、債務を保証人の人数で当分することを指しますが、連帯保証人が複数いる場合は、それぞれの連帯保証人がそれぞれ借金全体の支払い義務を負います。
例えば保証人が4人いて、500万円の借金がある場合、連帯保証人の場合はそれぞれが500万円を4人で割った125万円ずつ支払い義務を負うのではなく、それぞれが500万円の支払い義務を負います。
次は、担保の所有者の名義による注意点を詳しく解説していきます。
親の不動産を担保にする際の注意点
担保提供者として一番に候補に挙がるのは「親」もしくは「祖父母」ではないでしょうか。
ローン利用者の年齢にもよりますが、親や祖父母が担保提供者(=連帯保証人)になる場合、連帯保証人が高齢者である可能性があります。
ローン取扱会社によっては連帯保証人の年齢制限を設けていることもありますので、まずはその条件をクリアできているかを確認する必要があります。
年齢基準をクリアしている場合、あるいは年齢制限がない場合でも、高齢のために判断能力が弱っていると法律行為ができないこともあります。
債権者(ローン会社)としても、連帯保証人に意思能力がないと保証契約が無効になる恐れもありますので、判断能力チェックもしくは診断書の提出を求めてくることもあります。
その際、認知症などの診断を受けると、連帯保証人としての適格を欠くことになりますので、連帯保証人および担保物件を差し替えないとローン審査は通らなくなるでしょう。
また、すでに後見人などがついているケースでは、抵当権等の設定には後見人および家庭裁判所の許可が必要になります。
後見人や家庭裁判所は被後見人本人の資産防衛を第一に考えますので、連帯保証人になったり、不動産に抵当権を設定したりすることについて同意することはないでしょう。
高齢者の不動産を担保にする場合は、健康で判断能力があることが大前提となります。
子供の不動産を担保にする際の注意点
では、子供の不動産を担保にする場合にはどういった点に注意しなければならないでしょうか。
親とは反対に、子供は年齢が若く、社会経験や知識に乏しいということが考えられます。
ということは、不動産を担保にすること、また連帯保証人になるということがどういった意味を持つのか正確に理解していないかもしれません。
例えば息子が20代として、すでに結婚して自宅不動産を購入していたとしましょう。
この不動産にはまだ担保余力があるとして、担保にすること、また連帯保証人になることを妻に内緒で承諾したとします。
そして後にこの事実が妻の知るところとなってしまった場合、はたして夫婦関係はそのまま何事もなく維持できるでしょうか。
発覚するということは、すでに滞納状態となって督促、さらには差し押さえが行われているのかもしれません。そのときになって、「こんなことになるとは思っていなかった」と息子は言うでしょう。
こういった事態を避けるためにも、連帯保証人になるというのがどういうことなのか、抵当権を設定するというのがどういうことなのかを本人にキッチリ理解してもらうことが必要なのです。
若年者を担保提供者とする場合には特にこの点に注意が必要です。
不動産担保ローンを共有持分の不動産を担保にして借りる際の注意点
一筆の土地や一つの建物に対し、複数人で所有しているという状態です(これを共有名義の不動産といいます)。共有の場合は、はじめに持分の割合を決めなければなりません。
例えば一つの土地を二人で50%ずつ共有している場合、持分はそれぞれ1/2となります。これを共有持分といいます。
真ん中に線を引いてこっちが私、あっちがアナタ、ということではなく、全体に対して所有割合分だけ所有しているということになります。
物理的に分割が可能な土地などは共有物分割の請求をすることも可能ですが、本題から離れるのでここでは触れません。
不動産を共有する具体的な事例として、よくあるのは次のようなケースです。
・母親所有の自宅を兄(2分の1)と弟(2分の1)の2人で相続した(父親はすでに他界)
・父親所有の自宅を母親(2分の1)と兄(4分の1)と弟(4分の1)の3人で相続した
3000万円の土地建物をローン2700万円(夫名義)、自己資金300万円(妻名義)で購入
→夫(10分の9)、妻(10分の1)の共有となる
共有不動産を担保にする場合、自分の持分だけを担保にするのであれば誰の承諾もいりません。
しかし、債務者からすると持分だけを差し押さえたとしても競落することは難しく、担保価値は著しく低くなってしまいます。
それでもかまわないというケースもあるでしょうが、現実的にはほかの共有者全員の同意を取った上で、全員の持分を担保にすることが条件になるでしょう。
つまり、ほかの共有者も担保提供者となり、連帯保証人になる必要があるのです。
「担保物件は共有持分でもOK」と謳っているローン会社でも、ただし書きとして共有者全員を連帯保証人することが条件などと記載されていることがほとんどです。
実務的には、共有不動産を担保にする場合、事前に共有者の同意を取っておくことが望ましいと言えるでしょう。
不動産担保ローンで名義の違う不動産を担保にするときの名義変更について
例えば親名義の不動産を自分の名義に変更してから担保とする場合、他人名義の不動産ではなくなるので、親が連帯保証人になる必要はありません。
いずれ相続したら自分のものになるのだから、この機会に生前贈与して欲しい、そういう考え方もあるでしょう。
当人同士が納得すれば別に問題はないのですが、注意すべきことは、名義を変える=贈与となる=贈与税が発生する可能性があるということです。
親から、または祖父母からの贈与であれば、「相続時精算課税制度」などを利用して課税を繰り延べすることができるケースもあります。
また夫婦間であれば要件を満たせば「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」などを利用することもできるでしょう。
こういった制度をうまく使って贈与税を回避あるいは軽減することができるケースもあります。
名義を変えることによるメリット、デメリットは次の通りです。
- 名義を変更するメリット
- 名義変更すれば自己所有不動産になるので、担保にするのに誰の同意もいらない
- 不動産担保ローンの利用時に連帯保証人がいらない
- 名義を変更するデメリット
- 名義変更のために贈与あるいは売買をしなければならない
- 贈与の場合、贈与税がかかるケースもある
- 名義変更にあたって、登録免許税や司法書士手数料などが必要になる(=経費がかかる)
ちなみに、名義変更(所有権移転)にかかる登録免許税は、売買・贈与の場合物件評価額の2%です。
ただし土地に関しては売買の場合、令和3年3月31日まで1.5%に軽減されています。
また、一定の条件を満たせば住宅用家屋の場合の軽減措置が受けられます。
売買のケース:2000万円 × 1.5% + 1000万円 × 2% = 50万円
贈与のケース:2000万円 × 2% + 1000万円 × 2% = 60万円
名義変更に必要な費用は、もちろんその不動産の評価額によりますが意外と高額です。
他に目的がある場合は別ですが、不動産担保ローンの担保にすることのみが目的の場合、あえて名義を変える必要はないと言えるでしょう。
CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子賢司の一言コメント!
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2024年の贈与から相続時精算課税制度はこれまでの暦年課税と同様110万円の基礎控除が使えるようになります。
また同じタイミングで、暦年課税制度を使って生前贈与をした場合の相続財産への加算期間3年から7年になりました。
ただし亡くなる前の4年~7年前に贈与された財産については、贈与財産から100万円を控除した財産が相続財産に加算されるようになります。 いざというときのために知っておきましょう。
おすすめポイント
- 契約時の事務手数料・調査料・保証料無料。
- 全国の不動産が検討可能です。
- 抵当順位不問、親族の方の物件でも検討可能。
※.上記の金利は不動産担保カードローンのもの。不動産担保ビジネスローンは、年2.49%~8.99%。
※1.個人事業主は2,000万円以下。不動産担保ビジネスローンは、100万円~5億円。
※2.不動産に根抵当権が設定されます。
※3.法人契約の場合は原則代表者の連帯保証が必要。担保提供者の連帯保証が必要な場合があります。
まとめ
他人名義の不動産を担保にして不動産担保ローンを利用する場合の注意点についてご紹介しました。
ポイントを整理すると以下のようになります。
- 他人名義の不動産を担保にすることは可能
- 担保提供者に連帯保証人になってもらう必要がある
- 債務者が個人の場合、連帯保証人は2親等、あるいは3親等以内の親族に限られる
- 債務者が法人の場合、代表者の親族の他、役員でも連帯保証人になれる
- 担保提供者には事前に同意を得て、保証契約、抵当権設定等に協力してもらわなければならない
- 不動産担保ローンのためだけに名義を変更する必要はない
担保の提供や連帯保証には抵抗を持つ人も少なくありません。
資金の用途や必要性、返済計画、さらにはリスクなどをきっちり説明して、納得してもらった上で協力を仰ぐようにしましょう。
CFP(日本FP協会会員)
監修者 金子賢司の一言コメント!
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無担保ローンは金融機関にとってリスクが高い融資になるため、貸し倒れリスクに備えるために金利が高く設定されています。
しかし不動産担保ローンは、比較的価格が安定している不動産を担保とするため、金融機関の貸し倒れリスクが低くなることから低い金利で、長期の融資を受けられます。
もし担保にできる不動産を持っている親族がいたら、金利の高い無担保ローンを利用する前に親族に担保として提供できないかあたってみると良いでしょう。