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※「でんさい」は売掛債権の電子化による決済サービスですが、当記事では「でんさい譲渡」による資金調達を前提として解説します。

「ファクタリングとでんさい譲渡の違いは何?」

「資金調達では、ファクタリングとでんさい譲渡のどちらを利用すべき?」

「でんさい譲渡」と「ファクタリング」による資金調達では、売掛債権を現金化する点が共通していて、違いが分かりづらいと思う方もいるでしょう。

どちらが自社に合っているか迷う場合、まずは以下のことを覚えましょう。

【でんさい】
でんさいは譲渡予定先もでんさいネット利用申込が必須

【ファクタリング】
売掛債権があるなら利用検討可能

手形や売掛債権などを電子化する「でんさい」では、ペーパーレスな取引により、安全・簡単・迅速に決済や譲渡が可能です。

取引先もすでにでんさいを利用しているならメリットは大きいですが、でんさいネット利用先は極端に少ないのが大きなハードルと言えます。

ファクタリングであれば、ごく一般的な売掛金があれば、比較的手軽に利用検討可能です。

この記事では、「でんさい」と「ファクタリング」の違いを理解したい方のために、次のことを解説します。

  • でんさいとは何か?
  • ファクタリングとでんさい譲渡の違い・共通点
  • ファクタリングとでんさい譲渡がおすすめな企業の特徴

最後まで読むことで、でんさいを理解でき、でんさい譲渡とファクタリングのどちらを利用するべきか的確に判断できるようになります。

でんさい(電子記録債権)とは何?

「でんさい」は電子記録債権の略称で、厳密なことは抜きにするなら「でんさいとは、ペーパーレスの電子化された約束手形」と捉えればOKです。

従来の手形や売掛債権の下記のような問題点を解消するべく誕生しました。

手形の問題点 ・手形作成、交付、保管コスト
・紛失&盗難リスク
・分割不可
電子記録債権(でんさい)なら ・電子データー送信で低コスト
・記録機関のデーター保管の為低リスク
・分割OK
売掛債権の問題点 ・手形作成、交付、保管コスト
・手形作成、交付、保管コスト
・紛失&盗難リスク
電子記録債権(でんさい)なら ・電子データー送信で低コスト
・記録機関のデーター保管の為低リスク
・分割OK

※でんさいネット公式サイトより編集&抜粋

でんさい(電子記録債権)の流れ

でんさい利用の基本的な流れは以下の通りです。

期日決済の場合

  1. 商取引
  2. 支払企業がでんさいネットに発生記録請求
  3. 参加金融機関を通じて送金決済

でんさい譲渡の場合

  1. 商取引
  2. 支払企業がでんさいネットに発生記録請求
  3. 支払先に別企業との商取引発生
  4. 参加金融機関を通じて「譲渡記録請求」
  5. 最終支払先に参加金融機関を通じて送金決済

ファクタリングとでんさい譲渡の違い

ファクタリングとでんさいの主な違いは、次の3つです。

  1. でんさいの利用は「でんさいネット」の利用申込が必須
  2. 取引先が倒産したときの支払い義務の有無
  3. 会計処理方法

以上の各項目についてわかりやすく解説します。

でんさい譲渡の利用は「でんさいネット」の加盟が必須

でんさい譲渡

基本的に自社&電子債権譲渡先の両社が「でんさいネット」に加盟しないと利用できません。

でんさいネットは以下のような参加金融機関で利用できます。

  • 銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合
  • 商工中金
  • 農協系統金融機関ほか
ファクタリング

ファクタリング利用にあたってはでんさいネット等への加盟条件はありません。

ただし個人事業主の利用は制限があるケースもあります。

でんさいは自社だけではなく、でんさい譲渡先企業も「でんさいネット」を利用していることが必須条件です。

でんさい利用企業数&取引高は増加傾向ですが商取引全体から見れば微々たるもので、利用機会に恵まれるのは極めて稀でしょう。

その点、ファクタリングはでんさいネットのような加盟条件はなく、でんさいとは比較にならないほど利用可能シーンが幅広くなります。

取引先(でんさい発行先)が倒産したときの支払い義務の有無

でんさい譲渡
譲渡したでんさいが支払不能となった場合、手形保証人と同じような責任を追わねばなりません。

なお代位弁済した場合は手形と同様に特別求償権を取得できます。

簡単に言ってしまえば、でんさいは譲渡しても支払責任が消えるわけではないということになるでしょう。

ファクタリング
ファクタリングで売掛債権を譲渡した場合、償還請求されることは(原則として)ありません。

買取先が売掛債権のリスクを負うことになり、万が一売掛先が倒産した場合でも安心です。

ファクタリングでは譲渡した売掛債権に責任を負うことはありません。

ひとたびファクタリングが成立したならば、売掛債権が未回収になるリスクから開放されるわけです。

でんさいの譲渡では、未回収リスクは残ったままとなります。

会計処理のやり方

でんさい譲渡
でんさいを譲渡したときの仕訳は、基本的に手形を譲渡した場合とほぼ同じイメージでOKです。

「受取手形」は「電子記録債権」に、「受取手形売却損」は「電子記録債権売却損」と変化するだけです。

ファクタリング
ファクタリングの場合はより単純で、ファクタリング手数料相当を「売掛債権売却損」として仕分けし、売掛金や未収金などの金額とバランスすればOKです

でんさいで生じる電子記録債権の勘定項目は、銀行員でも目にする機会が少ないので、決算書でやや目立つ面はあるかもしれません。

ファクタリングでは特殊な勘定は使わないので、目立ちにくい面があります。

ファクタリングとでんさい譲渡の共通点

  • 売掛債権の譲渡である
  • 支払期日よりも前に現金を受け取るれる

でんさいの譲渡は電子記録債権の譲渡であり、ファクタリングは通常の売掛債権の譲渡となります。

いずれも売掛債権を譲渡しているという点では同じです。

また、ファクタリング、でんさい譲渡のいずれも支払期日よりも早期現金化が可能な点は共通しています。

ファクタリングとでんさい譲渡はこんな企業におすすめ

  • 「でんさい」は、でんさいを持っている&譲渡予定先もでんさい利用可能な企業
  • 「ファクタリング」は、一般売掛債権を現金化しつつ「未回収リスク」を回避したい企業

「でんさい」は、でんさいを持っている&譲渡予定先もでんさい利用可能な企業

でんさい譲渡
でんさいを持っていたとしても、譲渡したい先がでんさいを利用していなければ譲渡はできません。

もし譲渡予定先がでんさいを利用しているならば、でんさいは有力な選択肢となります。

でんさいは約束手形に比較してさまざまなメリットがありますが、十分に普及していないことが最大の利用ネックです。

じっさいのところ手形取引はピーク時の20分の1近くに落ち込んでいる中、でんさいはそのうちの10%にも満たない取引量にとどまっています。

せっかくの優れた決済手段にもかかわらず、利用が広がらないのが残念なところです。

「ファクタリング」は、一般売掛債権を現金化しつつ「未回収リスク」を回避したい企業

ファクタリング
ファクタリングはでんさいや手形でなくとも、一般的な売掛債権があれば利用検討可能です。

またでんさいのように、売掛先の倒産等による未回収時にも求償される心配がありません。

ファクタリングでは特殊な勘定は使わないので、目立ちにくい面があります。

万が一の売掛債権未回収リスクを、ファクタリングで回避可能です。

ファクタリングの魅力は何と言っても、でんさいよりも遥かに利用可能なケースが幅広い点です。

売掛金があるならば、とりあえずファクタリングの検討が可能となります。

さらに正規のファクタリングであれば、債権譲渡後の未回収リスクの負担がなくなるのも大きなポイントです。

ただしリスクに応じて相応の手数料が発生しますから、利用にあたってはリスクとコストのバランスの判断が重要となります。

まとめ

こちらではファクタリングとでんさいについて解説しました。

最後にもう一度、大切なポイントを振り返ります。

大切なポイント

  • でんさいは電子記録債権のことで、従来の手形や売掛債権の問題点を解消した比較的新しいサービス。
  • でんさいは優れた点が多いものの、ほとんど普及していないのが最大のネック
  • ファクタリングは売掛金があれば検討できるので、ほとんどの企業が利用検討可能
  • 正規のファクタリングなら、売掛債権未回収リスクにも対処可能
  • ファクタリングの手数料は高額なのでリスクとコストのバランスに注意

これらのことを理解していただいたことでファクタリングとでんさい譲渡のどちらが向いているか判断できるようになったことでしょう。

それぞれのメリットやデメリットをしっかりと把握した上で、適切な利用を心がけてください。