「少しお金を貸してくれない?」
友人からお金を貸してほしいと頼まれたとき、あなたならどうしますか?困っている姿を見れば、助けたい気持ちが先立つかもしれません。しかし、いざ貸したお金が返ってこなかったら、どう対処すればいいのでしょうか?関係性の悪化や法律的な問題への不安を抱えつつ、一人で悩む人も少なくありません。今回は、友人にお金を貸したことがきっかけでトラブルに巻き込まれた男性の体験談を通じて、こうした問題に直面した際の対応策や学びをお伝えします。
結城 拓己さん(仮名・27歳・男性)
愛媛県大洲市に暮らす27歳の会社員。独身で、一人暮らしをしています。年収は約380万円で、借金や借入の経験はこれまでありませんでした。
学生時代からの友人との交流を大切にしており、地元で過ごす穏やかな生活を楽しんでいました。ある日、そんな親しい友人からお金を貸してほしいと頼まれたことをきっかけに、思わぬトラブルに巻き込まれることになった体験談です。
- 職業:会社員
- 居住地:愛媛県大洲市
- 家族構成:独身
- 年収:380万円
- 借金合計額:なし
- 借入先の会社名:なし
- 借入件数:なし
- 利用時期:なし
※この記事は、ナビナビキャッシング編集部が実施したインタビューを基に作成しています。
始まりは少しの金額から
大学を出てから今の会社に就職した僕は、近くに大学時代の友人もいたため休みの日などは一緒に遊んだりしていたのですが、徐々に集まることは減ってきました。
少し寂しさを感じはしたものの、みんなそれぞれ付き合いなどもあるので仕方がないと思っていました。
そんな時に、会社から転勤を命じられて愛媛県に行くこととなりました。
友人関係も疎遠となってきたのでちょうどいいと思い、またいちから人間関係を築いていけばいいと考えてその転勤を了承し、愛媛県大洲市に行くこととなりました。
そこで2カ月ほど働いた日のことでした。
休日に駅前を訪れると、ふと誰かに名前を呼ばれました。
誰かと思って振り向いてみると、そこには高校時代に仲が良かったAがいたのです。
しばらく連絡を取っていなかったのですが、Aは私と別の大学へと進学した後、この愛媛県大洲市で働いていたそうです。
それからお互いに変わっていた連絡先を交換し、その日は一緒に夕飯を食べながらお酒を飲み、また会う約束をしたのです。
そこから、毎月1度か2度は会って遊びに行くようになりました。
どちらかに恋人ができたらそちらが優先になると思うので、こうやって友人同士で遊べるのも今のうちだけでしょう。
私はそう思いながら、高校時代の気持ちに戻ったかのようにAと遊んでいました。
ところで、Aには一つ困った癖が増えていました。
それは、ちょくちょくお金を借りることです。
Aと遊びに行くと、よく持っているお金が足りないからと私に借りるのです。
毎回1万円くらいで、必ず次に会った時には1円単位まで細かく返してくれるのですが、一度理由を聞いてみました。
「なあ、何でそうしょっちゅう金持ってないの?」
「俺さ、金持って歩いてるとつい使ってしまうんだ。だから、いつも最低限しか持ち歩かないで、カードとかも置いて歩くことが多いから、つい遊びに行く時もそのまま出てきてしまうんだよね。いつも借りることになって悪いと思ってるんだけど。」
「ふーん・・・まあ、いつもちゃんと返してくれるからいいけどさ。」
高校時代にはあまりお金の貸し借りなどはしないので、Aがこうした考えをしているとは思いもよりませんでしたが、こういったやり取りを繰り返していくうちに、私の中では『Aはお金を借りるけれど、すぐに返してくれる人』という印象が作られていったのです。
ファイナンシャルプランナーのアドバイス
突然の転勤で周囲に知人がいなくなると、旧友との突然の再会はかなりうれしく感じられるものでしょう。
しかも上記のケースでは高校時代に仲良くしていた友人ということですから、それだけで心許してしまうのも理解できます。
ただし「会うたびに少額を借りては返す」という友人の行動は、普通ならもっと理由を問い詰めたくなる印象です。
しかし「仲良しの旧友」ということで深く追求はできなかったのかもしれませんね。
いきなり大きな金額に
そうした関係が半年ほど続いたときのことでした。ふいにAが、こんなことを言い出したのです。
「なあ、悪いんだけど金貸して欲しいんだ。」
「いいけど、いくら?」
「持っていたらでいいんだけど、50万円貸してほしいんだ。」
「・・・はっ!?」
話を聞いてみると、Aは知人と共同経営で今度事業を始めることになっていて、その事務所を借りるための保証金で120万円を今月中に支払わなくてはいけないということだったのですが、Aは60万円を用意したけれど知人の方は金策が上手くいかず、10万円は用意したものの残りの50万円は来月になってしまうのだそうです。
なぜかというと、その知人は現在働いている会社を退職して、その退職金が50万円くらい支払われるのでそれを資金にしようと思っていたのが、代わりの人員が来月からでなくては勤務できないため、退職を1ヵ月伸ばして欲しいと会社に懇願されたそうです。
社長にも恩義があり、今度立ち上げる事業ではその会社も取引先になる予定なのでその意向は無視できないということで、Aにどうにかできないかと相談してきたということでした。
また、その事務所は好立地にあり、人気がある場所なので今回支払いができなければすぐにほかの人が借りてしまうだろう、ということでした。
そうなると、事業も上手くいくかわからなくなってしまうようです。
とりあえず、Aにその事務所の場所まで案内してもらうと、確かにとてもいい場所のようです。
また、事業の内容もそれなりに成功しそうな雰囲気でした。
そして、私はそれなりに貯金があるので、1ヵ月くらいなら50万円を貸しておいても特に問題はありません。
「貸してもいいけど、来月ちゃんと返してくれよ。」
これまで少額ながら、Aが何回もお金を借りてはきちんと返してくれていたので、今回も大丈夫だろうという信用があってお金を貸すことにしたのです。
翌週、あまり時間がないからとAはお金を受け取ると、すぐに去っていきました。
これから支払いに行って、色々な手続きがあるそうです。
これからしばらくは、開業の準備があって忙しくなるけど、開業したら一度見に来てほしいといわれてその日は別れました。
ファイナンシャルプランナーのアドバイス
1万円程度の借金と50万円の借金では明らかにレベルが違います。
1万円の返済を信用として50万円の返済してもらえると考えるのはあまりにも楽観的すぎると言えるでしょう。
たとえ気のおけない親友であったとしても、最低限「借用書」は書いてもらう必要があります。
仮に借用書を拒まれて友情が崩れるくらいなら、それは真の友ではなかったと割り切るべきです。
本気で共同事業を始めるくらいなら、そのくらいの労はいとわないのが普通でしょう。
消息不明?
それから1ヵ月が経ちましたが、Aからはまだ連絡がありません。
忙しいとは聞いていたのでこちらからの連絡は控えていましたが、貸した50万円のこともあります。
しかし、忙しい中に電話をかけて無視されてしまうと、相手を疑う気持ちが芽生えてしまいます。
だから、もう少ししたら連絡も来るだろうと自分に言い聞かせて、しばらくは連絡を待つことにしたのです。
しかし、とうとう2カ月が経過してもまだ連絡はありません。
これはおかしいと思ってAに連絡をしてみたところ、「この番号は現在・・・」と電話が通じなくなっていました。
そこで、先日連れていかれた事務所を見に行くと、そこもまだ空のままでした。
それでもまだAのことを信じたい私は、その物件を管理している不動産会社に連絡してみました。
すると、案内された物件は現在取り壊しのために話を進めていて、賃貸の話はしていなかったのだそうです。
一見するとまだ大丈夫なように見える物件ですが、近隣の建物と一緒に壊して新しく大きな建物を建てる予定なのだそうです。
これはつまり、Aに騙されたということなのでしょう。
そしてAは、発覚する前にどこかに逃げたということなのだと思います。
それに気づいたとき、私の目の前は真っ白になりました。
私にとって友人というのはかけがえのないものであり、特に高校の友人というのは一生付き合っていけるくらいの価値を感じていました。
そんな友人に裏切られたということは認めづらかったのですが、どう考えてもそういうことにしか思えません。
一応、このあと夏休みがあったので実家に帰り、その際には高校の名簿を頼りにAの実家も訪ねてみたのですが、既にそこには住んでいなかったようで空き地となっていました。
これで、Aの消息はぱったりと途絶えてしまったのです。
ファイナンシャルプランナーのアドバイス
50万円もの大金を借用書も取らずに貸すのも無謀ですが、事業の実態を確認せずに貸すのも無茶であったと言えるでしょう。
上記のケースでは、後で心配になってから不動産会社に連絡を入れていますが、貸す前に一本の電話を入れるだけで確実に防げた事案と言えます。
多額の預金があって「50万円くらいならくれてやる」くらいの気持ちだったら良いのですが、虎の子の50万円だったのなら、その程度の慎重さは必要だったのではないでしょうか。
警察に相談
これは詐欺に当たるのではないかと思い、警察にも相談してみました。
しかし、警察が動くためには証拠が必要なので、最低限お金を貸したことがわかる借用書か、せめて念書でもなければどうしようもないようです。
しぶしぶ諦め、今度は高校時代の友人を頼ってAの情報を集めてみました。
すると、Aの両親はすでに離婚していてどこにいるのか不明ということがわかりました。
また、Aのことを見たのは私が最も新しい情報だということがわかりました。
おそらく、これはAによる詐欺だったのでしょう。
といっても、50万円のために半年もかけるのは詐欺として効率が悪いので、おそらくは急に思いついたのでしょう。
しかし、これでAが味を占めてほかの友人も狙うようになったら申し訳ないので、今回の件を友人たちに話しておき、もしもAに会うことがあれば連絡してほしい、と伝えておきました。
それから1年が経ちますが、Aのことは誰も見ていません。
今でも、いつかお金を返しに来て謝罪してくれたらいいと思っています。
ファイナンシャルプランナーのアドバイス
警察に相談したところで、ほとんど証拠の見つかる見込みのない事案に、本気で取り合ってもらえる可能性は限りなく低いでしょう。
世の中で50万円~100万円程度の詐欺事件が多いのは、警察が動かないことを見越している面もあるのかもしれませんね。
なお、ほかの友人に被害が及ばないように詐欺情報を共有しておいたことは、とても良かったのではないでしょうか。
友人間の借金トラブルを防ぐために
借金トラブルにおいて、最も大変なのは貸したという証拠がない場合です。
そのため、たとえ友人間の貸し借りであっても借用書を作成しておくことが重要となるでしょう。
しかし、わざわざ借用書を作成するとなると、自分が信用できないのかといわれてしまうかもしれません。
もし借用書を作成できない場合でも、そのお金のやり取りを銀行振込で行えば、記録に残るので借金の記録に出来るかと思います。
ただ、これをやれば借用書が不要だということにはなりません。
あくまでもメインは借用書で、銀行振込の記録はその補助的なものだと思っておいてください。
また、お金を返してもらえないからといって、返済を求める裁判を起こすのが得策とは言い難いでしょう。
借金を督促したり、裁判を起こしたりするにはそれなりに費用と手間がかかります。
その手間と費用に見合うだけの額を貸しているのであればいいのですが、数万円程度ならスッパリと諦めてしまった方が良いこともあるでしょう。
その場合は、貸したお金は良い教訓になったと思いましょう。
もしも、どうしても返済して欲しいという場合は、弁護士に依頼してしまった方がいいでしょう。
弁護士に頼むにも費用が掛かるので、数十万円貸していなければ費用の方が高くつくかもしれませんが、それ以上の額を貸している場合はまず相談してみることをおすすめします。
相談だけなら専門の窓口があるので、まずはそちらに行ってみてください。
また、借金というのは実は時効があります。
この時効となる期間を過ぎてしまうと、借金については支払いの義務がなくなってしまうのです。
個人間の借金の場合、その時効は10年となっています。
それを過ぎると、たとえ裁判を起こしても返済してもらうことができません。
ただし、借金の時効は中断する方法があります。
それは、借金を一部返済してもらうことや裁判によって請求すること、差し押さえをすること、書類などで借金をきちんと督促することなどが当てはまります。
このうち、督促については多田口で言うだけでは意味がなく、書類などで督促することで6ヵ月だけ時効が延長されます。
それ以外では、例えば一部でも返済してからまた時効まで10年となります。
友人との間の話だからと、気軽にお金を貸してしまうと思わぬトラブルにつながることがあります。
個人でお金の貸し借りをするのは避けた方がいいのですが、どうしても必要なら少額でも借用書を作成したほうがいいでしょう。
もしも、借用書なしでお金を貸すのであれば、返してもらえなくても諦めるようにした方がいいと思います。
ファイナンシャルプランナーのアドバイス
友人へお金を貸す場合には返してもらえなくても問題がない範囲に留めることが大切です。
「他人にお金を貸すぐらいなら最初からあげてしまうのが良い」というような格言も耳にすることがありますが、的を射ていると感じます。
借用書があれば、ある程度裁判では有利になりますが、上記の例のように消息不明になってしまってはどうにもなりません。
万が一でも逃げられて悔しいと感じるお金は、貸さないのが一番の対処と考えたほうが良いでしょう。
【法的にも有効な借用書のサンプルはこちら】
家族や友人からお金を借りる方法について
著者情報
ナビナビキャッシング編集部
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