大学等へ入学する際には入学金や設備費用、授業料など一度に多額のお金が必要です。
この費用を事前に準備できた状態で大学入学の時期を迎えることができていれば良いですが、大学の費用や通学のために転居する費用など、用意する資金が必ずしも足りているとは限りません。
このような資金不足のときに活用されるのが「奨学金」です。
奨学金は大きく「給付型」と「貸与型」があり、貸与型は返済が必要な借入金(借金)で、返済は卒業後からはじまり、完済までは多くの方が10年以上かかります。
長期間に渡る返済中には転職や結婚、引越しなどさまざまなライフスタイルの変化があります。
このような変化があっても奨学金の返済が滞りなく行われていれば問題ありませんが、奨学金の返済が難しくなった場合には奨学金の返済を止めるのではなく、事前に対策を行う必要があります。
ここでは独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を例に奨学金返済を滞納するとどうなるのか?
奨学金の返済が難しくなった場合の対策・対応方法について見ていきたいと思います。
奨学金の返済は自分だけの問題ではない
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のWebに掲載されている「奨学金とは」には
「経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の貸与を行い、また、経済・社会情勢等を踏まえ、学生等が安心して学べるよう、「貸与」または「給付」する制度です」
とあります。
また、その基本的仕組みは、限られた資金の中から毎年一定の資金を貸し付け、返済を受けながらまた新たに貸付を行うという仕組みとなっています。
そのため、奨学金の返済を滞ってしまったり、返済を行わないなどの人が増えてくると、新たに奨学金を利用したい人が利用できなくなったり、金額の制限を受けたりする可能性があります。
ですので、当たり前の話にはなりますが、奨学金を借りたのであればきちんと返しましょう。
そうしないと自分以外の人に迷惑をかけてしまうだけでなく、奨学金制度の存続すらも難しくなってしまうことになりかねません。
もしものことで奨学金を返済できなくなる可能性がある
前章では「奨学金の返済は自分だけの問題ではない」ということについてお話しました。
そうはいっても、何らかの事情によって返すことが難しくなってしまう人も少なくありません。
奨学金返済中の長期間では就職はもちろんのこと、転職や転勤、病気による療養、結婚、住宅購入などライフスタイルの変化やライフイベントが訪れます。
これらの大きな変化があっても奨学金が返済できる収入があれば問題ありませんが、これらの変化により収入が減少もしくはなくなったりした場合には奨学金の返済ができなくなる可能性があります。
前述したとおり、奨学金の返済は学校卒業後から始まります。
また返済期間も10年を超える長期間になります。
大きな変化が予定される、もしくは発生しそうな場合には事前に準備が必要となってきます。
奨学金が返済できず、滞納になったときはどうなる?
奨学金が返済できず、滞納してしまった場合には、他の借入金やローンとほぼ同じ手続きや内容で各状況により以下のような手続きが取られます。
1カ月目~郵便等による滞納の通知及び電話による督促 |
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奨学金の返済を滞納してしまったときは、1カ月目は契約者に郵便等による通知と電話による督促が行われ、次月に2カ月分引き落としの手続きが取られます。 |
2カ月目~郵便等による滞納の通知及び電話による督促(契約者及び連帯保証人) |
2カ月連続で奨学金の返済を滞納してしまったときは、契約者と連帯保証人に対して郵便等による通知と電話による督促が行われ、次月に3カ月分引き落としの手続きが取られます。また、延滞金も2カ月目から加算して請求されます。(延滞金の起算日は延滞日翌日から) |
3カ月目以降~信用情報機関への登録、支払督促、差押え |
3カ月連続で奨学金の返済を滞納した場合は、信用情報機関(いわゆるブラックリスト)への登録や滞納が9カ月を超えると債権回収業務が民間業者へ委託され、さらに裁判所を通じて支払督促が行われ、奨学金の一括返済が求められます。 |
また、裁判所の手続き確定後も奨学金を返済しないと不動産や給与の差押えが行われます。
主な手続きの内容と流れは上記の通りですが、滞納当初より連絡が取れず音信不通になったり、契約者や連帯保証人の対応が良くない場合など、状況によっては、上記の流れや内容ではなく早期に信用情報機関への登録や支払督促などが行われる場合もあります。
3カ月以上の滞納は信用情報機関への登録が行われたり、支払督促がなどの手続きとなるため、奨学金返済だけでなく他のローン契約が出来なくなったり、他のローンの一括返済を求められたりするなど他の生活にも影響が出てきます。
奨学金が返済できないときの救済策
どうしても奨学金が返済できないときは、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金が用意している以下2点の救済策を検討しましょう。
- 減額返還
- 返還期限猶予
それぞれの特徴について紹介していきます。
減額返還
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に願い出できる制度で、 一定期間、毎月の返還額を2分の1または3分の1に減額して、減額返還適用期間に応じた分の返還期間を延長する制度です。
(なお、この制度は返還予定総額が減額されるものではなく、奨学金の返済が延滞している場合は申請が出来ませんので注意が必要です)
収入減少等による経済困難事由の場合の収入等の基準 | |
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給与所得の方 | 年間収入金額325万円以下 |
給与所得以外の所得のある方 | 年間所得金額225万円以下 |
申込方法としては、所定の申請書に必要事項を記載の上、マイナンバー等の添付書類を添付の上申請を行います。
申請時期は「減額返還の開始を希望する次の2カ月前まで」なので、余裕を持って申請しましょう。
詳しい手続方法については「奨学金減額返還願等の入手と記入」に記載されているので、ご参考にしてください。
返還期限猶予
災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に願い出できる制度で、一定期間、返還を猶予し先送りにする制度です。
(なお、返還すべき元金や利息が免除されるものではありませんので注意が必要です)
収入減少等による経済困難事由の場合の収入等の基準 | |
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給与所得の方 | 年間収入金額300万円以下 |
給与所得以外の所得のある方 | 年間所得金額200万円以下 |
申込方法としては、所定の申請書に必要事項を記載の上、マイナンバー等の添付書類を添付の上申請を行います。
提出時期については「延滞していない人」と「延滞している人」で異なります。
返還期限猶予の提出時期 | |
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延滞していない人 | 猶予開始希望月の3カ月前~前々月末まで |
延滞している人 | できるだけ早く提出してください |
また、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の公式ホームページも書いていますが、8月末~11月の期間は審査が混雑するので、審査結果が通知されるまでに時間がかかります。早めに申請しましょう。
詳しい手続方法については「奨学金減額返還願等の入手と記入」に記載されているので、ご参考にしてください。
まとめ
奨学金の返済を滞納したときの手続きや、払えなくなった時の救済策について、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の内容を例に見てきました。
「学びたい」という気持ちを応援していただける奨学金を活用して学んだ後は、次の世代の方が奨学金を活用できるように毎月期日に返済していくことが望まれますが、長期間の返済期間の中では経済や生活の変化もあります。
その変化に事前に備えていれば奨学金の返済も滞ることなく行えますが、準備もできていない状態で突然起きた変化に対応できない場合には、奨学金返済の救済策である「減額返済」や「返済猶予」を活用し、生活のピンチを乗り切りましょう。
一番行ってはいけないのは、相談や連絡をしない、音信不通になる、返済できるのに行わないことです。
奨学金を借りようとしている方にとっては「借金」なので不安もあるかと思います。
また、現在返済中の方も長期間に渡って返済を行うので「本当に返済できるのだろうか?」と感じることもあるかと思います。
そのような時には中、長期のライフプランや予定を書き出してみましょう。
「このくらいの収入や支出であれば返済も行って生活できる」もしくは
「収入がこれくらいになったら返済が厳しくなるかもしれない」など文字・数字に表してみましょう。
奨学金を借りる前でも返済中でも重要なのは事前の準備です。