年金を払っても将来損をするの?正しく知りたい未納のデメリットと年金の仕組み
武藤 英次

この記事の執筆者

ファイナンシャルプランナー

武藤 英次さん

老後の備えとして真っ先に思い浮かべるのは、やはり年金なのではないでしょうか。

実際に厚生労働省の「国民生活基礎調査(2018年度)」によると、高齢者の半数は「収入が年金のみ」という結果となっています。

老後への不安を掻き立てるようなニュースや記事を目にする機会も多いこのごろですが、年金が老後の備えの主力であるのは、今後も変わることはないでしょう。

そのため、正しく年金を理解しておかないと間違った情報に踊らされてしまうことにもなりかねません。

こちらの記事では日本の年金制度について、主に以下の内容を誰にでもわかりやすく解説していきます。

  • 年金とは何か
  • 年金に関する一般的な不安や疑問点
  • 年金掛け金を払わない場合のリスク

こちらの記事を最後までお読みいただくことで、年金について必要十分な基礎知識を身につけられるようお役立てください。

年金とは何かをサクッとおさらい

年金の基礎と家族の人形

年金について詳しく解説していく前に、まずは「年金とはそもそもどのような制度なのか」を簡単に確認しておきましょう。

あらかじめ正しい年金のイメージをつかんでおくことで、後に続く解説もスムーズに理解できるようになります。

年金は「みんなで支え合うシステム」

年金を「つみたて貯金」のように思われる方もいるかもしれません。

しかし実はあなたの払う保険料は、現在年金を受け取っている人の支払いに充てられています。

つまり自分の払ったお金が自分のために貯められずに、知らない人の年金支払に使われているというわけです。

※この方法のことを「賦課方式(ふかほうしき)」と呼んでいます。

年金の仕組みがわからないと、なんだか納得できない話に感じるかもしれませんね。

じつは年金は個人ごと別々のものと言うよりも、社会全体でお互いに支え合うシステムであるために、上記のような賦課方式を採用しているわけなのです。

みんなで支え合う「賦課方式による公的年金制度」には以下のようなメリットがあります。

  • 老齢世代を現役世代全体で支えることができる
  • 物価変動や賃金変動などの影響を少なくすることができる
  • 全員分の巨大な年金資産を運用するリスクを小さくできる
  • 低所得者の負担軽減等の措置をとりやすい

ちなみに、もし年金がなかったとするならば老齢の親世帯は子供世帯から送金して支える必要が出てきます。

そうなると子供世代が一人っ子の場合は大変ですし、子供が居なければだれも支えてくれないということにもなってしまいますよね。

公的年金であれば子供の数に関係なく、所定の保険料の負担で老後の安心を比較的公平に享受できるわけなのです。

国民年金・厚生年金・国民年金基金の仕組みをチェック

公的年金の仕組みをごく簡単に言ってしまうと、定められた月数分の保険料を納付(最低10年分)することで、命ある限り年金を受け取る資格が得られる制度ということになります。

公的年金はいくつか種類がありますが、「国民年金(基礎年金)」は日本国内に住む20歳以上の全員が加入することになっています。

会社員や公務員の人は「厚生年金」が国民年金に上乗せされます。

つまり公的年金は国民年金と厚生年金の2階建ての仕組みが基本となっているわけです。

※厚生年金基金などを含めると3階建てとなります。

自営業などで、厚生年金に加入していない場合には1階部分の国民年金(基礎年金)だけしか受け取れませんが、任意で「国民年金基金」もしくは「i-DeCo(個人型確定拠出年金)」に加入して、受け取る年金を増やすことは可能です。

公共年金の仕組み図

※2019年7月現在の公的年金制度を簡易的に示しています。

なお第2号被保険者の厚生年金と国民年金の保険料は会社側で給与水準に応じた保険料を計算し、まとめて支払います(給与天引き&会社負担の折半)。

また会社員に扶養されている配偶者(第3号被保険者)については、勤務先の年金制度が保険料を(総合的に)負担してくれています。

第3号被保険者は自己負担なしで国民年金の保険料(令和元年の月額保険料は16,410円)を払っているのと同じ扱いになるわけです。

年金に関する不安や疑問点をわかりやすく解説

年金に不安を覚える女性と年金手帳

「年金制度は将来破綻する」「若い世代になるほど損をする」といった話を聞いたことがある方もいることでしょう。

近頃のニュースでも「老後の資金は年金だけでは2000万円不足する」といった話題を目にしますね。

こうした話は全てデタラメとは言い切れない面もありますが、多くの方に誤解されている面があるのも事実です。

こちらの項目では年金でよくある不安や疑問点について解説します。

財源不足で年金は破綻する?

日本の人口はついに減少トレンドに入り、今後急速に少子高齢化が進むことが心配されています。

「少なくなっていく若手世代」が「増えていく老齢世代」を支えられるのかという不安を感じるのは当然かもしれませんね。

結論を言ってしまうと「年金財政が厳しい局面を迎えるのは間違いないが、破綻してしまう可能性は限りなく0に近い」と言えます。

公的年金は国民全員が加入義務のある制度ですから、運営には国の予算(税金)が投入されています。

現在でも年金の運営費用は保険料ではなく国費が投入されているのです。

簡単に言ってしまえば、年金は民間会社のように倒産することはないということになります。

若い世代は年金を払っても損をするというのは本当か?

「若い世代は年金を払い続けても、死ぬまでに受け取れる年金の額が下回るから結局損をする」という意見を目にすることがあります。

これは平均寿命に対する年金の受取額に限って見るとすれば、間違いとは言えない部分もあるでしょう。

しかし年金は貯蓄とは全く異なるものであることを考慮する必要があります。

机上で計算したお金の計算だけでは、年金の真価を知ることはできないのです。

年金制度の仕組みや意義について、もう少し解説していきましょう。

年金は貯蓄とは全く異なるもの

公的年金は正式には「社会保険制度」の中の1つという位置づけです。

つまり公的年金は「貯蓄」ではなく「保険」ということになります。

社会保険制度の中には「病気や怪我」に対応する労災保険&健康保険、「失業」に対応する雇用保険、そして「介護」に対応する介護保険なども含まれるわけです。

このなかで公的年金は「老齢」「障害」「死亡」の3つに対応することになります。

以上の内容を一覧表にまとめてみましょう。

リスクの種類 対応する社会保険制度
病気や怪我 労災保険、健康保険
失業 雇用保険
介護 介護保険
老齢、障害、死亡 公的年金

「年金」というと老齢になってから受給する年金だけがイメージされがちですよね。

しかし「予期せず一定の障害を負った場合」や「一定の年齢内に死去した場合」にも「障害年金」もしくは「遺族年金」が支給されることになっているのです。

ちなみに「老齢年金」は原則として生涯(死ぬまで)もらえるので「長生き保険」と考えるとわかりやすいでしょう。

「自分が何歳まで生きるか」はわからないものなので、死ぬまで支給が約束されている老齢年金で備えるのは合理的と言えます。

年金には老齢年金以外の大切な機能も含まれている

老齢年金については、ほとんどの方に認知されていますが「障害年金・遺族年金」については知らない方が意外に多いようです。

「障害年金」というのは、不意に障害状態となった時に年金が支払われる制度のこと、「遺族年金」は家計を支える大黒柱が亡くなってしまった場合に、遺族に対して年金が支払われる制度のことです。

上記の2つの年金があることにより「年金は貯蓄ではなく保険である」ということの意味がよく分かるのではないでしょうか。

ちなみに一般的な保険と同じように、障害や死亡などの事由が発生した後にあわてて加入しても、障害年金や遺族年金は支払われません。

年金保険料を払わないことのリスクを正しく理解

テーブルに置いた年金手帳のページと電卓に紙幣

「国民年金の納付率は約7割※、さらに免除や猶予を加味すると半分以下」などという話を聞くと、「年金なんて払わなくてもよいのでは?」と思われるかもしれません。

しかし上記の国民年金の納付率は第1号被保険者だけに限った話で、厚生年金などを含めた全体では9割以上がきちんと納付されていることに留意する必要があります。

こちらの章では年金保険料を支払わない場合のリスクなどについて続けて解説していきましょう。

※令和元年6月28日厚生労働省プレスリリース「平成31年4月末現在 国民年金保険料の月次納付率(1年経過納付率)より」

無年金の恐ろしさ

いわゆる「不労所得」と呼ばれるような、働かなくても得られる収入が十分にあるなら無年金でも生活できるのかもしれません。

しかしこれと言った不労所得がない場合、老後の収入は公的年金等に頼らざるを得なくなります。

まだ体が元気なうちは就労して賃金を得ることもできるでしょうが、誰しも病気や老いによっていつかは働けなくなる時が来ます。

寝たきりの状態が何年も続くような場合には、生涯もらえる年金がないのはかなりシビアな状況を招いてしまいます。

そのような状況になってから、無年金を嘆いても「時すでに遅し」ということになってしまうのです。

保険料の納付が難しいときは納付猶予や免除制度を活用できることも

国民年金の保険料は令和元年現在で月額16,410円(年額196,920円)で、夫婦の場合は月額32,820円(年額393,840円)となり、それなりに負担に感じられる方も多いでしょう。

ちなみに大学生の子ども一人分も負担するというような場合には月額49,230円(年額590,760円)と大きな金額になってきます。

そのため負担に耐えきれずに未納(滞納)のままにしてしまう方が想像以上に多くなっているのです。

    

しかし一定水準の所得を下回っていて保険料の支払いが厳しい場合には、国民年金保険料の「免除」もしくは「支払猶予」を受けられるようになっています。

免除&猶予は「未納(滞納)」とは意味が全く異なるものです。

免除・猶予の種類 保険料額※ 年金額への反映
(全額払込時との比較)
資格期間への参入
全額免除 0円 1/2 あり
4分の3免除 4,100円 5/8 あり
半額免除 8,210円 6/8 あり
4分の1免除 12,310円 7/8 あり
納付猶予 - なし あり
未納(滞納) - なし なし

※保険料額は令和元年のもの

上記の表を見ていただくと、保険料免除を受けた場合でも払込した保険料以上の割合で、年金額に反映されることがわかります。

たとえ全額免除(支払保険料0円)の場合であっても半分は年金額に反映されるのです。

せっかく免除や猶予を受けられる条件を満たしているのに、手続きをしないで未納のままにしてしまうと大きな損をしてしまいます。

免除や猶予は自動的には適用されず、必ず自ら手続きをする必要があるので注意が必要です。

なお免除を受けた期間については、後から不足分を収めること(追納)もできます。

追納の保険料はタイミングにより若干金額が調整されますが、免除期間分を追納することで満額の年金を確保可能です。

ちなみに滞納が続いてしまうと督促を受けることになりますし、最終的には財産の差し押さえに進むこともあります。

安易に滞納を続けていると、大変な事態を招きかねませんから気をつけてくださいね。

命ある限り年金はもらい続けることができる

年金は一度受給資格を満たして手続きをすれば、原則として命ある限り年金を受給可能です。

国民年金の満額は年額およそ78万円で、夫婦なら156万円受給できますから、余裕ある暮らしは難しくとも生活の助けになることは間違いありません。

平成29年8月1日から、資格期間10年以上で年金を受け取れるように!

以前は老齢年金を受け取るためには25年もの保険料納付済期間が必要でした。

しかし平成29年の8月1日からは、大幅に期間が短縮されて10年で年金を受け取ることができるようになっています。

また現在60歳以上で資格期間が10年未満の方でも「任意加入制度」を利用して、受給資格を得られる場合があります。

年金以外で今から取り組めることはなにか

年金を考える各年代の夫婦

ここまでの解説で公的年金は重要かつ役に立つ制度であることが、なんとなくおわかりいただけたのではないでしょうか。

しかしながら公的年金制度だけで豊かな老後生活が約束されているかと言えば、なかなかYESとは言い切れない面があるのは事実です。

とくに国民年金だけの場合や、厚生年金の加入期間が短い場合などには、赤字ギリギリの生活を強いられる可能性が高くなります。

そんな時に役に立つのが「国民年金基金」や「i-DeCo」などの、自主的に加入して年金を増やせる制度です。

なかでも最近とくに注目を集めているのが「i-DeCo(イデコ)」です。

「掛金全額所得控除」「運用益も非課税で再投資」「受け取るときも控除あり」と、3つの税制優遇が受けられるメリットがあり、見逃せません。

まとめ

こちらの記事では年金について、わかりやすく解説してきました。

最後にもう一度、大切なポイントを振り返っておきましょう。

  • 年金は受給資格を満たすことで、一生涯にわたり年金を受け取れるようになる国の制度
  • 年金は貯蓄ではなく「保険」の制度であり、いざという場合の障害年金や遺族年金も用意されている
  • i-DeCo(イデコ)」などで自主的に年金を増やすこともできる金や遺族年金も用意されている

これらのことを理解していただいとことで、年金に対して抱いていた不安や疑問がある程度は解消できたのではないでしょうか。

ぜひ参考にしてくださいね。