生命保険に加入する第一の目的は、自身に万が一のことがあった場合に、家族が安心して暮らすための生活資金を確保するということにあります。

それ以外に、課税という観点でみたとき、生命保険は相続税対策の有効な手段として、節税につなげることができますが、その一方で、契約の仕方によっては、高額な税金を支払うこととなる場合もあります。

安易に生命保険に加入するのではなく、支払うべき税金のことを十分に考えて契約する必要があるのです。

ここでは、生命保険を活用した相続税対策に焦点を当てて、その仕組みや効果、注意点について解説します。

廣岡 伸昌

ひろおかFPオフィス代表

廣岡 伸昌

資格
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定),宅地建物取引士,貸金業務取扱主任者
経歴
大阪大学法学部卒。経済学修士(計量経済学) 1999年 地方銀行に入行。ローン、事業性貸出等を担当 2004年 地域金融機関をクライアントとするITコンサルティング会社に入社。管理会計システムの導入支援等を実施 2017年 大手銀行グループに入社。個人ローン関連部門に在籍 2019年 大手銀行グループにて勤務する傍らで「働き方改革」における副業・兼業推進の流れを受けて FPオフィスを開業。お客様一人一人のお金に関する不安、疑問を解消し、将来に亘るライフプランの形成を ご支援することをミッションとして各種相談、執筆業務に従事
活動情報
得意分野
相続、住宅ローン、資産運用、ライフプラン・家計など

保険金に課税される税金の種類は?

生命保険による相続税対策を考える前提として、まず、保険金に対する課税の仕組みを理解しておく必要があります。

保険金の受取時には、どのような税金が課税されるのでしょうか。これについては、保険料を誰が負担するかと、保険金の受取人は誰かによって、課税される税金の種類が変わります。

課税される税金の種類が変わると、税額も違ってきますので、まず、この課税関係を理解することが重要です。契約内容による課税関係を整理すると【表1】のようになります。

【表1】死亡保険金の課税関係
パターン 保険料負担者
(契約者)
被保険者 保険金受取人 課税される税金の種類
1 X X Xの相続人 相続税
 ※「500万円×法定相続人の数」が非課税
2 X X Xの相続人以外 相続税
 ※非課税の適用なし
3 Y X Y 所得税・住民税
(一時所得)
4 Y X Z 贈与税

【表1】の4つのパターンの概要は以下のとおりです。

パターン1:保険料負担者=被保険者

※保険金受取人は保険料負担者の相続人

例えば、父親が自身を被保険者として、自ら保険料を支払っており、その子が保険金を受け取るようなケースです。このような生命保険契約においては、保険金受取時に相続税が課税されます。

パターン2:保険料負担者=被保険者

※保険金受取人は保険料負担者の相続人以外

例えば、子のみが相続人である場合において、父親が自身を被保険者として、自ら保険料を支払っており、その孫が保険金を受け取るようなケースです。このケースではパターン1と同様に相続税が課税されます。

パターン3:保険料負担者=保険金受取人

例えば、父親を被保険者として、子が保険料を支払い、自ら保険金を受け取るようなケースです。

この場合は、自身が支払った保険料に対して、保険金が支払われるという関係になるため一時所得という扱いになり、所得税や住民税が課税されます。

パターン4:保険料負担者≠被保険者≠保険金受取人

被保険者、保険料負担者、保険金受取人の全てが異なる場合で、例えば、妻を被保険者として、夫が保険料を支払い、子が保険金を受け取るようなケースです。

この例では、夫(父親)から子に贈与があったとされ、贈与税が課税されます。

生命保険を活用した相続税対策の仕組み

生命保険を活用して相続税対策を行う場合は、前項の課税関係を理解したうえで、検討を進めていく必要があります。

基本的な対策としては、前項のパターン1とパターン3を利用します。それでは、なぜ、これらのパターンでは相続税の節税につながるのでしょうか。

まずパターン1のような保険契約については、「500万円×法定相続人の数」までの金額で相続税が非課税となります。例えば、法定相続人が配偶者と子2人の計3人の場合は1500万円が非課税となります。これを活用すると課税対象となる遺産総額が少なくなるため、相続税の節税につなげることができるのです。

また、パターン3では、受け取った保険金は一時所得として課税対象額が、以下の算式によって求められます。

課税対象額=(受取保険金-払込保険料-50万円)×1/2

この計算式からわかるとおり、受け取った保険金の額がそのまま課税対象となるのではないことがポイントです。

受け取った保険金から、支払い済みの保険料と特別控除額(最大50万円)を差し引いた金額の半分が課税対象額となります。

例えば、保険料が年額100万円、保険金が2000万円の生命保険に加入して、10年後に被保険者が亡くなり、保険金を受け取った場合の課税対象額は(2000万円-1000万円-50万円)×1/2=475万円となります。課税対象額が受け取った保険金より大幅に少なくなることがわかります。

これらの2つの仕組みを活用することが、節税策の基本となります。

それでは、いずれのパターンを優先して活用した方がいいのでしょうか。

まずは、そもそも課税されなくなるパターン1で非課税枠を使い切るようにしましょう。さらに、非課税枠を超えて生命保険に加入する場合は、パターン3で一時所得として保険金を受け取るようにすると、効果的に相続税の負担を抑えることができます。

生命保険による相続税対策の効果

具体的な事例で生命保険による相続税対策の効果を確認しましょう。

前提条件は下記のとおりとします。なお、以下の事例は生命保険による節税の効果を伝えるためのものであり、記載以外の条件は考慮していません。

前提条件

  • Aの現状における保有財産は現預金2億円
  • Aの法定相続人は妻B、長男C、二男Dの計3名
  • Aは相続税対策として保有している現預金から保険料を支払って、下表の生命保険契約の締結を検討している
  • 10年後にAが亡くなり、相続が発生すると仮定し、その間、保有財産の増減はないものとする
保険料負担者
(契約者)
被保険者 保険金受取人 死亡保険金額 保険料
生命保険➀ A A 次男D 1500万円 1300万円(一時払)
生命保険② 長男C A 長男C 2000万円 100万円/年(年払)

(1) 特に対策を行わない場合

特に対策を行わなかった場合は、相続税が課税される遺産総額は現預金2億円であり、相続税の総額は2700万円となります。

(2) 生命保険➀のみに加入した場合

生命保険➀については、前項のパターン1に該当する生命保険契約となるため、「500万円×法定相続人の数」までの金額で相続税が非課税となります。

このケースでは次男Dが受け取る保険金1500万円の全てが非課税となるため、相続税が課税される遺産総額はもともと保有していた現預金2億円から生命保険①の一時払い保険料1300万円を差し引いた1億8700万円となります。

その結果、相続税の総額は2375万円となり、特に対策を行わなかった場合と比較すると、相続税を325万円引き下げることができます。

(3) 生命保険➀と生命保険②に加入した場合

生命保険②については、前項のパターン3に該当する生命保険契約となります。よって、相続税ではなく、長男Cに対して所得税および住民税が課税されます。

長男Cは毎年100万円の保険料の支払いが必要になりますが、その支払いの都度AがCに対して贈与したとします(10年間にわたって毎年100万円、計1000万円を贈与)。

このとき、相続税が課税される遺産総額は、(2)のケースからCに贈与した計1000万円がマイナスされるため、1億7700万円です。これに対する相続税額は2125万円となります。

ただし、Cが受け取る保険金は一時所得として、所得税および住民税が課税されます。

その金額は99万7500円(※)で、相続税と所得税・住民税を合わせたトータルの税負担は約2225万円となります。(2)のケースから、さらに税負担を約150万円引き下げることができます。

(※)Cに保険金以外の所得がないものとし、住民税の税率は10%として計算しています。

生命保険による相続税対策の注意点

これまで、相続税対策に際して生命保険を利用することのメリットについて説明してきました。一方で、注意が必要な点もあります。代表的な例としては、以下のようなケースです。

(1) 保険金受取人を配偶者にする場合

生命保険の本来の目的に沿って、配偶者の老後の生活資金を確保するために保険金の受取人を配偶者にすることはよくあります。

ただし、相続税対策という観点では、受取人を配偶者にしない方がよいといえます。

すなわち、配偶者については、もともと相続税額を軽減する措置があり、1億6000万円もしくは法定相続分のいずれか多い方の金額まで相続税がかかりません。そのため節税を目的とする場合は、子など配偶者以外の相続人を受取人とすることがポイントになります。

(2) 保険金受取人を相続人以外とする場合

【表1】のパターン2の場合です。この場合は「500万円×法定相続人の数」までの非課税が適用されません。

それに加えて、保険金の受取人が1親等の血族および配偶者以外の人である場合は、その人の相続税額が2割増しになります(「相続税額の2割加算」)。

例えば、孫(代襲相続の場合を除く)や子の配偶者などを受取人とした場合は、このケースに該当しますので注意しましょう。

(3) 贈与税が課税される場合

【表1】のパターン4の場合です。同じ金額水準においては、一般に贈与税の方が相続税より税率が高く、基礎控除も小さくなるため、節税どころか税負担が大きくなる可能性があります。

例えば、前項のシミュレーションにおいて、加入する生命保険が下表のように、いずれも贈与税が課税されるパターンであったとします。このときに課される相続税および贈与税の合計額は約3076万円となり、特に対策を行わずに現預金で保有していた場合よりも税額が大きくなります。

保険料負担者
(契約者)
被保険者 保険金受取人 死亡保険金額 保険料
生命保険➀ A 妻B 次男D 1500万円 1300万円(一時払)
生命保険② A 妻B 長男C 2000万円 100万円/年(年払)

まとめ

いかがでしたでしょうか。生命保険を活用することで節税につなげられる一方で、注意すべき点もあることがおわかりかと思います。新たに生命保険に加入する場合は、契約内容を十分に検討するとともに、既に加入している生命保険があれば、契約内容をいま一度確認してみることをお勧めします。

廣岡 伸昌

ひろおかFPオフィス代表

廣岡 伸昌

資格
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定),宅地建物取引士,貸金業務取扱主任者
経歴
大阪大学法学部卒。経済学修士(計量経済学) 1999年 地方銀行に入行。ローン、事業性貸出等を担当 2004年 地域金融機関をクライアントとするITコンサルティング会社に入社。管理会計システムの導入支援等を実施 2017年 大手銀行グループに入社。個人ローン関連部門に在籍 2019年 大手銀行グループにて勤務する傍らで「働き方改革」における副業・兼業推進の流れを受けて FPオフィスを開業。お客様一人一人のお金に関する不安、疑問を解消し、将来に亘るライフプランの形成を ご支援することをミッションとして各種相談、執筆業務に従事
活動情報
得意分野
相続、住宅ローン、資産運用、ライフプラン・家計など