金融リテラシーを向上させるための課題へと取り組み方とは
淺井 敏次

この記事の執筆者

FP事務所ASAI

淺井 敏次さん

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金融リテラシーとは

「お金に関する知識や情報を正しく理解し有効活用できる能力」を意味します。

金融リテラシー

  • 「金融」は、資金を融通することで、お金の流れのこと。
  • 「リテラシー」知恵や能力のことです。

つまり「金融リテラシー」が向上することで、経済的に自立するとより良い暮らしができるようになります。

今回はそんな金融リテラシーの内容から、どうやって金融リテラリー向上をさせていくのかまで解説しています。
あなたのより良い暮らしの実現に向け、少しでもお役立てください。

金融リテラシー

➀最低限身につけるべき「金融リテラシー4分野15項目」

金融リテラシー概念図

「金融経済教育研究会」の報告(2013年4月)「最低限習得すべき金融リテラシー4分野・15項目」の要約

消費者が経済的に自立し、より良い暮らしを送っていく上で、4つの分野を意識して習得活用することが必要です。

その基本となるのが、「1.家計管理」と将来を見据えた「2.生活設計」

実際に金融商品を利用するには、取引(契約)を適切に行える「3.金融商品を適切に選択する」スキルを身に付けていることが必要です。

また、自らの判断のみに頼らず「4.外部の知見活用」の必要性についても理解しておくことが重要です。

1.家計管理
適切な収支管理(必要なものと欲しいものを区別し赤字にしない)の習慣化
2.生活設計
労働収入と計画的支出の必要性を理解しライフプランを明確化
3.金融経済の理解と、金融商品の利用
・金融取引の基本としての素養は、消費生活と契約の理解と金銭トラブル解消
・金融分野共通で、金融商品の利用選択とコストの理解
・保険でカバーすべき項目と保障の理解
・ローン・クレジットの留意点、計画的な使用の習慣化
・資産形成商品のリスクとリターンの関係、分散投資、長期運用効果の理解
4.外部の知見活用
金融商品を利用するにあたり、第三者のアドバイスを適切に活用

より詳しい内容は以下のとおりです。

金融リテラシーの4分類

※出典:金融経済教育研究会資料による

➁金融リテラシーの考え方

基本的な考え方は、従来の「知識偏重」から脱皮し金融に関する適切で具体的な行動ができること。

すなわち「知識を前提とした継続的行動」を習慣化することです。

これは経済協力開発機構(OECD)などの諸外国で言われている概念、「金融ケイパビリティ」と同じ認識といえます。

「金融ケイパビリティ」は金融に関する能力の意味で、海外では「金融リテラシー」と区別して少し上位の概念で使用されており世界標準の言葉です。

日本では、金融や経済の知識の習得が重視される傾向がありました。

ただ、「金融リテラシー」は知識だけでなく、行動を含めた「リテラシー」と考えるべきで、金融商品や保険を理解しているだけでは不十分です。

金融リテラシーが高いと何がいいのでしょうか

  • 金融商品や保険を利用する場合、自分の収入やライフスタイル、人生設計を考えて判断、行動ができます。
  • 社会保障、年金制度の仕組みの理解は、保険料金や支払い期間、年金受け取り額など人生設計に役立ちます。
  • 株価が乱高下しても経済、相場の仕組みが分かっているので慌てることもありません。
  • 悪質な投資・保険、悪徳商法・詐欺などの勧誘を鵜呑みにせず、トラブルを回避できます。
  • 消費者の金融商品・サービスに対する要求水準が厳しくなれば、より良い商品の普及につながることが期待できます。

調査結果から見る日本人の「金融リテラシー」

「金融広報中央委員会(事務局:日本銀行内)」発表の「金融リテラシー調査2019」は、全国18~79歳、25,000人を対象にした調査で、2016年に続き2回目、今後も3年毎に調査予定です。

設問は合計58問 「金融リテラシー・マップ」に基づき、「金融知識・判断力」 「行動特性・考え方等」基本53問+限定5問で、米国FINRA (金融業界監督機構)や OECD/INFE など海外機関による同種調査と比較できる内容になっています。

日本国内の結果

「金融教育」:年齢が高くなるにつれ正答率が高まり、金融教育を受けた人は正答率が高く、18〜29歳の正答率は低いので若年層に対する金融教育が必要です。

「家計管理」や「生活設計」など授業での金融教育を求める声が多く67.2%、「金融教育」を受けた認識があるのは 8.5%、家庭で「お金の管理」を教えてもらったのは20.3%です。

「家計管理」:7~8割は1カ月単位で収入・支出を管理し、7割は何か購入前に家計の余裕について注意深く考え、過半数は病気、失業等に備えた生活費を確保しています。

「生活設計」:お金に関する長期計画を立て「その日暮らし」を回避する考え方の人が多い。

「人生の3大費用(教育費、住宅費、老後の生活費)」の必要額がわかっているのは約半数、資金計画ができているのは、教育費は約半数、老後、住宅費は3割です。

「金融商品の利用選択」:「金融取引の基本」の正答率は74.0%。

「金融・経済の基礎、保険、ローン・クレジット、資産形成」の正答率は5割。借入れ・保険商品購入・資産運用の際に、他の金融機関や商品と比較するは、5~7割。

自分の年金について、受け取り金額、被保険者の種類、年金受給の必要加入期間を認識しているのは4割。「株式、投資信託、外貨預金等」の購入経験ありは、2~3割。うち2割は、商品性を理解しないまま購入しています。

「外部の知見の活用」トラブル発生時の相談窓口・制度を理解しているのは2.2%。金融トラブルを経験した人の32.1%は現在でも相談窓口や制度を認識していません。

金融や経済に関する情報を月に一度もみていないのは38.7%。

金融商品選択時の情報源は

  1. ウェブサイト
  2. 金融機関窓口での相談
  3. 金融機関に置いてあるパンフレット
  4. テレビ・新聞雑誌等および家族・友人との会話 等

の順。

金融・経済情報を全くみない人の正誤問題の正答率は、36.3%<56.6%(全体平均) 

諸外国に比べて見劣りする日本の金融リテラシー

米国との比較:「金融知識に自信がある人」米国76%>日本12%
米国は、「自信過剰バイアス」の可能性も。

OECDとの比較:「金融知識・判断力」「行動特性・考え方等」について:英国、独、仏>日本

「家計の金融資産構成」日本、米国、ユーロエリアを比較

「家計の金融資産構成」日本、米国、ユーロエリアを比較

日本の家計金融資産(現金・貯金、投信、株式、保険など)は約1,800兆円。

現金・貯金は約50%と割合が多く、投信、株などは約15%と低くなっています。

この結果から言えることは、現金・貯金が安全だと思い込んでいるのなら消費者にとって好ましいかは疑問です。

家計金融資産の分散・長期投資は、成長分野への持続的な資金供給に繋がるなど、経済全体の成長に貢献する効果があるので、より積極的に取り組んでいくべきです。

金融リテラシー向上への取り組み

金融教育

学校教育は10年に一度の学習指導要領改訂で2020年小学校から順次変わっていきますが、「生きる力」がテーマで金融教育の浸透も期待されます。

民法改正で、2022年4月からは成年年齢が18歳となり、金融トラブルの観点からも大きな影響があります。

社会人に関しては、若年層、ファミリー層、高齢者など、各層のニーズに適合した情報や学習機会を提供するきめ細かな対応が望まれます。

業界団体・各金融機関(銀行、証券業、投資信託、生命保険、損害保険など
自らが取扱っている預金、株式、投資信託、保険などの金融商品や意義について説明責任があり、資産運用や投資知識の向上セミナー・意識啓発を実施。
日本 FP 協会
学校、生活者の貯蓄・投資などに必要な知識・スキル「パーソナルファイナンス教育スタンダード12」を作成、家計管理や生活設計のセミナーなど実施。
自治体(消費生活センター、公民館など)
消費生活相談、消費者啓発、生活に関する情報提供や多重債務問題への注意喚起、詐欺的商法・犯罪被害に遭わないための啓発教育など実施。
確定拠出年金(DC)企業型
制度導入研修、継続研修を事業主が実施する義務があり、DC 個人型は国民年金基金連合会が教育する義務がある。
市民グループなど
各地で金融商品の仕組みやライフプランの立て方など、それぞれの関心にあわせた自主的な学習を行っています。

どの様に「金融リテラシー」を学ぶ?

「金融リテラシー」を学ぶには、書籍、ウエブサイト、新聞などがあります。

政府HP 政府広報オンライン
知るぽると
業界団体のHP 全国銀行協会
日本証券業協会

また、「習うより、慣れろ」で日常生活の実体験で行動に移すことが重要になりますが、内容を理解できない場合は、中立な立場の外部知見を活用する、あえて反対の意見もきいてみるなど、自分なりに取捨選択できるスキル習得も考えましょう。

学び方は、自分のニーズやレベルによって選べばいいと思いますが、全く初めての方に向け参考として書籍を紹介しておきます。

基本理論
「パーソナルファイナンス」アルトフェスト
「FP技能士テキスト」日本FP協会、金融財政事情研究会
金融、資産運用関係
「金融の基本 この1冊ですべてわかる」田渕直也
「お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践」勝間和代
「節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本」坂本綾子、泉美智子
関連書
「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング 他
「アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書」 アンドリュー・O・スミス

まとめ

  • 「金融リテラシー」はどういうものか
  • 「最低限身につけておきたい4分野」の考え方
  • 「金融リテラシー」が必要な理由
  • 日本人のリテラシーのレベルは世界の中でどの程度か

を、調査結果や資産運用状況などで説明しました。

「金融リテラシー」の知識は、書籍や政府HPなど身近なところで学べます。その学んだ知識を理解レベルから、適切な判断・行動ができる知恵や能力にまで高め、日常生活の中で発揮することが重要になります。

目指す「金融リテラシー」は海外で考えられている「金融ケイパビリティ」と同じレベルです。自分のニーズやレベルにあった「学び」を考えましょう。