
子育て世代のよくあるお悩みといえば、教育費。平成から令和へ時代が変わっても、子どもに十分な教育を受けさせたい、という親の想いは変わりません。
以前に比べ、さまざまな教育の選択肢があり、小学校に上がる前からたくさんの習い事をする子どもが増えています。
子どもの将来を考えるといろいろやらせてあげたいけれど、全てやるのは経済的に難しい……。教育資金はいくらあれば安心なの?と悩む方が大勢いらっしゃいます。
残念ながら、教育資金には「これが正解!」という答えがありません。ご家庭ごとに様々な状況があり、さらに晩婚化・晩産化が進んだことで「子育て世代」の幅が広がっています。一般的にはいくら、とまとめるのが難しい世の中になっているのです。
だからといって、最初から考えるのをやめてしまうのは、リスクが高い考え方と言えます。
教育費がかかる時期というのは、子どもの年齢である程度は予想できるもの。100%の備えを目指すことは難しいけれど、できる備えは必ずあります。
まずは基本的な教育費の備え方を知りましょう。そして親自身の年代別に、押さえるべきポイントを知りましょう。
要所要所をしっかりおさえ、無理のない教育資金計画をたてることが大切です。
教育資金計画の基本
教育費の理想は、いつでも使えるまとまったお金「貯蓄」があることです。
この「いつでも使える」というのがとても重要なポイント。
金融商品や保険商品は、「お金」として実際に使うために、一定の手続きが必要です。
急にお金が必要になったとき、例えば保険商品を解約するという方法もあります。
しかし、保険の中には、解約時期によって支払った保険料より、戻りが減ってしまう商品もあります。
急な進路の変更があった時に、純粋な貯蓄があるかどうかは、とても重要です。
キャッシュレス化が進む世の中でも、教育費の支払いは「○日までに○万円を現金で」ということが多く、まだまだ現金払いが主流。
カード払いが可能でも、別途手数料がかかる場合もあります。
どの年代であっても、全く貯蓄がない、という場合は将来に向けた積立を今すぐ始めましょう。
積立を始める際に、目標にすべき必要額がわからないから始められない、という場合があるかもしれません。しかし、必要な教育費は進路によって大きく変わります。
ごく普通に進学するだろうと思っていた子どもが、急に大きな夢を持ち、留学したいと言い始めるかもしれません。考えに考えて目標額を決めたとしても、不足する可能性もあるということです。
積立はあくまで教育資金の一部分。それだけで準備するわけではありません。たとえ毎月1,000円の積立であっても、始めることに意味があります。
子どもの行動を完全に予測することは不可能ですから、教育資金計画は、大体のところがわかればいい、という軽い気持ちで作ることも大切です。
教育費の分かれ道には
いつまで公立なのか、
いつから私立なのか、
公立に行くけれど塾に入るのか、
私立に行くけれど塾には行かないのか、
大学に通う場合は自宅通学が可能なのか、
一人暮らしをするのか
などなど想定できる状況が山ほどあります。
ざっくりと書き出し、万円単位でいつ頃、いくらぐらいと仮の計画をいくつか作ってみましょう。
今はインターネットで簡単に情報が集められます。考えること、調べること、知ることだって立派な備えの一つ。
考え過ぎて何もできないより、何か具体的に行動を起こしていきましょう。
仮の計画ができたらそれを実行できるのか、客観的に考えてみましょう。
このままでは実行が難しそうなら、以下に紹介する方法で対応できるかどうかを探っていきましょう。
方法はいくつかありますが、それぞれの方法にはメリットデメリットが必ずあります。
よく理解し、バランスよく活用することが大切です。
教育資金に備える3つの方法
教育資金に備える方法は3つあります。
それぞれに関して、詳しく説明していきます。
教育資金のための保険
教育費に備えるといえば、学資保険が思い浮かぶ方も多いかもしれません。
ただ最近の傾向として、学資保険の返戻率[受取る保険金÷支払い保険料]は低下しており、以前ほどの貯蓄性は期待できません。
しかし、時間はあるけれど貯蓄が無い(または少ない)場合、保険商品による備えは有効な選択肢といえます。
また、積立を使わずにとっておく自信がないという方にとっては、使うために手続きが必要、というデメリットをメリットと捉えることもできます。
その場合、学資保険に代わる保険としては低解約返戻金型保険(契約時に決めた時期より後の解約で、通常より高い解約金が受け取れる)も一般的です。
注意点は、決められた時期より前に解約すると受け取る解約金は通常より低くなることです。
急な進路の変更があった場合はどうするかも含め、受け取り時期や保険金額の設定をしましょう。
奨学金
奨学金とひと口に言っても、国や地方自治体による公的なものと、私立学校や民間企業・団体によるものがあり、それぞれに内容は異なります。
奨学金を利用する際、最も重要なことは返済するのは子ども自身であるということ。
子どもには、適切な時期に正しい説明をしてください。本人が十分納得した上で、利用を決めましょう。
キャッシュレスが進む時代には、家族でお金の話をすることが、将来の自立に向けた金銭教育になります。
子どものお金の話をするのは抵抗があるという方は、わが子の金銭感覚を知る貴重な機会だと考えてみてはいかがでしょうか。
また、奨学金の多くは応募するために一定の成績要件や、世帯の所得要件等があり、申請までに様々な手続きが必要です。
申込みに締め切りもありますので、利用の可能性がある場合には、早め早めの情報収集を心がけましょう。
教育ローン
奨学金と教育ローンの大きな違いは、申込者は保護者であるということです。
教育のためと思うとついハードルが下がりがちですが、ローンというからには借金だ、という意識を強く持ちましょう。
奨学金と同様に、国や地方自治体による公的なものと、民間のものとがあり、それぞれ要件が異なります。
押さえるべきポイントとして、公的な教育ローン(教育費一般貸付)は世帯所得が一定をこえると利用できませんが、民間の教育ローンはある程度の収入が見込めなければ利用できません。
ローンを組むには審査があり、最後の手段と思っていた教育ローンの審査が通らず、利用できない可能性もあります。
奨学金と同様に、早め早めの情報収集と準備が必要です。
年代別の注意点
教育費を考えるには、自身の年齢も考慮に入れる必要があります。
年代別で、気を付けたいポイントなどをまとめてみました。
20代や30代の場合
20代や30代は、それほど大きな貯蓄がなかったり、まとまった額の積立は難しいかもしれません。
しかし、この年代の強い味方は何と言っても時間です。大きな教育費がかかるまで、まだ時間があるケースが多いと思います。
コツコツ積立は必ず始めましょう。
若い世代では保険に加入する方が減っていますが、貯蓄がない間は適切な生命保険に加入することが、万一の場合に備えて必要です。
共働きの場合は、妻・夫両方の保険が重要になってきます。
細かいニーズに合わせた保険商品も増えていますので、学資保険にこだわらず、バランスよく保険を活用しましょう。
マイホーム購入に際には、教育費にまわす予定の貯蓄を全て使い果たすことがないようにしてください。
住宅購入時には物件価格以外に様々な費用がかかります。
勢いや雰囲気で決めることなく、物件・ローンの条件等十分に比較検討することが大切です。
同様に、貯蓄ができたら住宅ローンの繰上げ返済!という考え方もリスクを伴います。
手元に全く貯蓄がなくなり、住宅ローンよりはるかに金利の高い教育ローンを利用することになっては意味がありません。
教育費のめどがつくまでは、あえて繰上げ返済をしない、という選択肢も頭に入れておきましょう。
現役時代の残り時間が長い世代にとっては、今後の社会保険制度の変化は大きく家計に影響してきます。
情報は最新のものをアップデートしましょう。iDeCoなど長期の資産運用に関する知識も、強い味方になります。
40代や50代の場合
給料が安定し、貯蓄もできている(やろうと思えばできる)方が多くなる年代です。
気をつけたいのは、ある程度の収入と貯蓄があることで、気が大きくなってしまうこと。
晩婚晩産で生まれた一人っ子には、つい沢山の教育費をかけてしまいがちになります。
子どもが高等教育を受ける頃の世帯収入はどういう状況なのか、今後の給与の変化や年金受給額、住宅ローン返済等、わかる限り具体的な数字で確認してください。
たとえ再就職する予定であっても、ほとんどの世帯でリタイヤが近づくほどに収入は下がります。
急な病気で働けなくなる可能性も上がります。
これまでの経験と知識を生かし、セカンドライフに向けた老後資金と合わせて、資金計画を立てていきましょう。
40~50代で貯蓄が全くなく、時間的な余裕もないという場合は、奨学金・教育ローンに関する情報をすぐに収集しましょう。
そして、厳しい現実があったとしても、進路について親子でしっかりと対話してください。
社会経験の長い年代だからできるアドバイスもあるはずです。
ただ家計が苦しいことを隠し、最後の最後に経済的な理由で進学できなかった、とならないよう気をつけましょう。
最後に、金銭的な余裕がある時ほど、リスクの高い投資商品には注意が必要です。
ほとんどの場合、簡単にうまい話は転がりこんできません。老後資金を狙った投資詐欺も増えています。
金融資産運用は、これからの時代に大切なスキルではありますが、投資を始めるならば基礎をしっかり学ぶことから。
そして必ず余裕資金(無くなっても困らないお金)で始めましょう。間違っても、教育資金や老後資金を使い込むことのないように。
教育費は無理せず家族の対話が大事
初めての受験年齢が年々下がっている現状では、ひと昔前のように「小中高は公立で、お金を貯めて高等教育資金に備えましょう!」というアドバイスが適切ではなくなっています。
また、どの年代であっても、ある程度の諦めが必要な場合もあります。
たとえ子どもの将来のためになる事でも、現在、そして未来の親世代の生活が破綻してしまっては、結果的に子どもの負担になってしまうからです。
何かを諦めることになったとしても、家族での対話があり、できることは全てやったと思えるかどうかで、その後の親子関係は全く違うものになります。
情報社会に生きる現代の子どもは、親が思うよりずっと沢山のことを知っているし、理解することができます。
親がどれだけ考えても出なかった教育費の解決策を、子ども自身の柔らか頭が出してくれる可能性もあります。
できれば、あまり深刻な状況になる前に、家族で自然にお金の話ができるのが理想的です。
あまり難しく考えず、金銭教育の一環だと思って生活にお金の話を取り入れてみましょう。
まとめ
教育費というと、どうしてもネガティブなイメージがあり、見て見ぬ振りをしたくなります。
どんな資金計画を立てる時もそうですが、まずはわが家の状況を正しく見極めることから始めましょう。
貯蓄ゼロの家庭と貯蓄500万円の家庭とでは、教育資金計画は大きく変わってきます。
子どもの年齢、人数、現役時代の残り時間によっても同様です。まずは現状を「見える化」していくことを目指しましょう。
教育費の悩みは、そこに大切な子どもがいるからこその悩みです。
いつかは手を離れていくわが子との時間を、教育費や諸々のストレスはあれども、できれば楽しく過ごしたいと思いませんか。
どんなに親が心配したところで、子どもの人生は子ども自身が作っていくものです。
高学歴でもニートになってしまう人もいれば、高卒でも起業し、経営者として成功する人もいます(そうはいっても、心配してしまうのが親だとは思いますが……)。
教育費の正解は短期的には誰にもわからないと考え、柔軟に対応していくことが大切です。
過度に悩み過ぎて動けなくなってはなんにもなりません。できることは必ずあります。小さなことでも、具体的に実行しましょう。
そして、時間と情報を味方に、わが家だけの教育資金計画を立てていきましょう。