
今回は年金の中で、自分が生きているうちにもらえる年金なのに“もらい忘れ”が多い「障害年金」について制度概要を解説します。
障害年金を知る前に、年金の種類は3種類!
「年金」というと、多くの人は「将来65歳以降、自分が生きている間は国の制度として受け取れるお金」という認識の「老齢年金」だけだと思っているのではないでしょうか?
何か自分の身体や健康に緊急事態が起きたときの準備として、多くの人は【民間】の生命保険などに加入しようとしませんか?
しかし実は【民間】の保険に入らずとも、公的制度で受けられるものがあるのです。
忘れられがちですが、全国民が掛け金を支払って維持されている年金は、
- 自身の身体にけがなどで動けなくなるような事態の時に受けられる「障害年金」
- 本人が死亡した後の家族の収入を守る(ちょっと言いすぎかな?)ための「遺族年金」
という保険、保障の機能があります。
老齢年金は知っているだけでは受け取れません。しっかりと手続き完了してから受け取ることができます。
【民間】の生命保険に加入していることで安心してしまい、本来もらえる公的資金としての年金受給の確認を漏らしてしまわないようにしましょうね。
障害年金とは
~日本年金機構HPから
年金の内容は基本、この「日本年金機構」が業務運営をしておりますので、こちらのホームページ(HP)を見てみましょう。
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度があります。
また、障害年金を受け取るには、年金の納付状況などの条件が設けられています。
いかがでしょうか?
【民間】の保険と遜色ないことが書かれていますよね?
ただ【民間】の保険と違うと感じるところは、(保険屋さんのように)身近にその説明や手続きをサポートし、教えてくれる人がいないことです。
たとえば、
- いつどのようになったら、いくらくらいもらえるのか?
- どのように手続きをしたり申し出れば受け取れるのか?
といったことが全然わからないという印象ではないでしょうか?
それって、もったいないことだと思います。
2種類の障害年金~どちらをもらうの?両方?
先にも述べた通り、障害年金には2種類の年金があります
それは
- 障害基礎年金
- 障害厚生年金
の2種類です。
ではどちらを受け取ることが出来るのでしょうか?
それは基礎年金と厚生年金だから、職業によって変わってきます。
国民年金の被保険者には「障害基礎年金」。
また、厚生年金の被保険者は「障害厚生年金」が支給されます。
厚生年金は公的年金の2階建て部分の年金です。厚生年金の被保険者は自動的に国民年金の被保険者でもあるので、「障害基礎年金」も併せて支給されます(後述の障害等級3級の場合を除く)。
では、さらにどちらの年金の対象なのか?を判断するのに重要なキーワードがあります。
それは、『初診日』です!
『初診日』とは、障害の原因となった病気やけがについて初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日とされています。(日本年金機構HPより)
この「初診日」が受給手続きを進めていくための重要項目になっているのです。
そしてどちらの障害年金に該当するのかの確認を【支給要件の確認】と言うのですが、一定の障害の状態にある者で、この「初診日」の時点で国民年金の加入(または20歳前、60歳以上65歳未満で日本国内居住の間)にあるときは『障害基礎年金』、同じく厚生年金の加入状態にあるときは『障害厚生年金』をもらえることとなります。
このほかに『保険料の納付』という要件もあります(詳細はここでは省略します。詳しくは日本年金機構HPにてご確認ください)。
つまりきちんと年金(保険料)を納めていることが基本的前提ですよ、ということです。
年金種別 | 支給要件 |
---|---|
障害基礎年金 | 「初診日」が国民年金の加入期間(または20歳前、60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる間にある場合で一定の障害の状態にある者、および保険料納付要件を満たす者(ただし20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、納付要件はありません) ※保険料納付要件の詳細は、日本年金機構HPでご確認ください |
障害厚生年金 | 「初診日」が厚生年金の加入期間にある場合で一定の障害の状態にある者、および保険料納付要件を満たす者 ※保険料納付要件の詳細は、日本年金機構HPでご確認ください |
障害の認定
では“一定の障害の状態”とは、いつ障害と認められて、どういう状態を指すのでしょうか?
その鍵は≪障害の認定日≫です。
これも初診日がわかっていればスムーズに進んでいきます。
初診日から1年6カ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)または20歳に達した日に障害の状態にあるか、または65歳に達する日の前日までの間に障害の状態となった場合
初診日から1年6カ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)に障害の状態にあるか、または65歳に達する日の前日までの間に障害の状態となった場合
年金種別 | 障害認定日 |
---|---|
障害基礎年金 | 初診日から1年6カ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)または20歳に達した日に障害の状態にあるか、または65歳に達する日の前日までの間に障害の状態となった場合 |
障害厚生年金 | 初診日から1年6カ月を経過した日(その間に治った場合は治った日)に障害の状態にあるか、または65歳に達する日の前日までの間に障害の状態となった場合 |
その他の要件
これまで日本年金機構が公表している、障害【年金請求書提出までの流れ】に沿って確認内容を順番に触れてきました。
つまり本来ならここまでを確認してから障害年金の請求に入っていくわけなのですが、この【流れ】のほかにもまだ確認しておくことが実はあります。
それは支給対象となる障害等級と対象障害の内容(障害認定基準)の確認です
日本年金機構HPの表では『支給要件』欄には表示されず、別掲となっておりますが、重要なポイントです。
まず障害等級です。
これは障害基礎年金と障害厚生年金とでは若干違っています。
【障害基礎年金の支給対象となる障害等級】1級・2級
【障害厚生年金の支給対象となる障害等級】1級・2級・3級
このように障害厚生年金の方が3級までカバーされています
次に障害認定基準です。
※詳細は《国民年金・厚生年金保険 障害認定基準》をご確認ください
【障害基礎年金の認定基準概要】
障害年金の対象となる病気やケガは、手足の障害などの外部障害のほか、精神障害やがん、糖尿病などの内部障害も対象になります。(日本年金機構HPより)
と記載があります。
事例も示されているのですが、その中に、精神障害の括りで『うつ病』『認知障害』も具体的例示で明確に対象となっております。
障害基礎年金と同様
障害年金の受給金額の比較~計算式
これまで確認してきた通り、障害基礎年金と障害厚生年金とでは、共通部分はありますが、違いもあることがわかりましたね。
では受給可能な金額はどうなのでしょうか?
【民間】の保険では、契約の時になんらかの金額を示されて説明される商品や場面が多く、これによって印象に残るため、請求漏れはあまり発生しにくいのです。
一方で公的年金は、それ自体をよく知らないし、自分で掛けている感覚も乏しかったり、障害年金は特にどのようにもらえばいいのかを考えたこともない、というのが正直なところではないでしょうか?
ですが、受給可能な金額を知ることはとても大事で、たとえば【民間】の保険を見直す時にも、公的年金でこれだけカバーされているなら実は無駄だったな、と感じる人もいるかもしれません。
もちろん【民間】の保険は障害年金とは別支給で、上乗せ金額として有効に感じることもあると思いますが、それは家計それぞれの事情で見直してみるということだと思いますね。
それでは金額計算を見ていきます。
実は障害年金の金額計算は障害等級によって変わってきます。
★障害等級1級の場合
781,700×1.25+子の加算
★障害等級2級の場合
781,700+子の加算
◦子の加算《第1子・第2子》各224,900円
《第3子以降》 各 75,000円
※子の定義
·18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
·20歳未満で障害等級1級または2級の障害者
★障害等級1級の場合
(報酬比例の年金額)×1.25+(配偶者の加給年金額(224,900円)※
★障害等級2級の場合
(報酬比例の年金額)+(配偶者の加給年金額(224,900円)※
★障害等級3級の場合
(報酬比例の年金額)・最低保障額 586,300円
※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。
注1)配偶者が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)または障害年金を受けられる間は、配偶者加給年金額は支給停止されます。
注2)報酬比例の年金額の計算は次の通り。
◦算式1~本来水準
(平均標準報酬月額)×7.125/1000×(平成15年3月までの被保険者期間(月))+
(平均標準報酬額)×5.481/1000×(平成15年4月以後の被保険者期間(月))
◦算式2~従前額保障
{(平均標準報酬月額)×7.500/1000×(平成15年3月までの被保険者期間(月))+
(平均標準報酬額)×5.769/1000×(平成15年4月以後の被保険者期間(月))}×1.002
※最後の1.002は昭和13年4月2日以降に生まれた方は1.000として計算する
この算式1および2を比較して、万一【算式1<算式2】となった場合は算式2を採用する
◇被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
◇障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金額計算の基礎とはされません。
まとめ
これまで見てきたように、体が不自由になったなどの場合に受けられる保障についてもし知らなければ、本当に損をしていると思いませんか?
ここでは制度概要の解説となりましたが、事務手続きや実際の障害状態に対して障害年金請求ができるかどうかは、可能な限り社会保険労務士や社会保険事務所等で事前に請求前に相談されることがまず第一です。
またこのように年金制度を少しでも知ることで、【民間】の保険内容との重複加入、また保険の解約や特約等中身の見直しを上手に検討したりする基準にもなりそうですね。
それができると、手元の資金流出も少しずつ抑えられるようになるかもしれません。
米国でも実現できていないこの日本の社会保障制度を、今一度、老後2000万円問題で注目された年金制度を理解・確認して、日ごろの生活にも役に立てて行きましょう!