宗教にハマってカードローンを利用。そこから抜け出した体験談
武藤 英次

この記事の監修者

ファイナンシャルプランナー

武藤 英次さん

欲しいものがある、結婚式のご祝儀が必要など、予期せぬ出費が発生した時に、お金がない!ということは、誰にでも起こり得ることです。
そんな時に強い味方になるのがカードローンですが、中には思わぬ理由でカードローンを利用する人もいます。

今回紹介するのは、街で勧誘された宗教にハマったことがきっかけで、カードローンを利用した人の話です。

カードローンを利用してから借金を無事に完済するまでに、どのようなことがあったのでしょうか。

プロフィール

今回の体験者

  • 名前:久保田 典弘さん(仮名)
  • 性別:男性
  • 職業:学生(当時)
  • 年齢:34歳
  • 居住地:千葉県船橋市
  • 家族構成:独身(当時)
  • 年収:150万円(当時)
  • 借金合計額:50万円
  • 借入先の会社名:アイフル、アミーゴ
  • 借入件数:消費者金融2件
  • 利用時期:2005年6月~2008年1月

最初は些細な興味から始まった

自分がカードローンを利用したのは、20歳くらいの頃、当時はまだ大学2年生でした。

その時は、レポートを書いていたもののなかなかまとまらず、そのうち頭の中で将来のことや恋愛、就職についての悩みなどが湧き出してきたことで、レポートを書くのを中断して、とりあえず頭を冷やすことを考えていたので、とりあえず気分転換にと思って街中に出かけたのです。

それが、そもそもの始まりでした。

特に目的地もないままに街を歩いてみましたが、なかなか悩みは頭から離れず、考えもまとまりません。

若干イライラし始めた時に、ふと聞こえてきたのが「あなたの悩みを聞かせてください」という声でした。

そちらを見てみると、通行人に声をかけている女性がいたのです。

無料で悩み相談に乗ってくれる女性との出会い

どうやら、無料で悩みの相談に乗りますという活動をしているようで、今の自分にはピッタリなように思えました。

通行人が何人も通り過ぎる中でも、めげずにその人は声を上げ続けています。

自分は近くに行き、「悩み相談に乗ってもらえますか?」と声をかけてみました。

女性はにこやかな表情でうなずいてくれ、近くの喫茶店で話をすることになりました。

その時の自分の悩みは、若さゆえのありがちな悩みではありましたが、自分にとっては重大な問題です。

ありきたりな慰めなどをされても聞く気はなかったのですが、その女性は静かにうなずきながら自分の話を聞いてくれ、時折自分の意見に同調しながら穏やかに話をしてくれました。

この話法は、今ではセールスマンの行う同調話法ということが有名ですが、当時はまだそれほど知られているものではなかったので、自分の話を真剣に聞いてくれているように思え、非常に話しやすい相手だと思いました。

すっかりその女性を信用し、進められるがままにセミナー参加をすることに

やさしく微笑む勧誘女性

一通り話して、その内容を肯定してもらえたことで、すっかりとその女性を信用する気持ちになっていました。

そんな時に女性から「このセミナーに参加すれば、悩みは晴れるかもしれません。」と渡されたのが、とある新興宗教の教祖が開催するセミナーのお知らせでした。

とりあえず誰かに話してすっきりとしたものの、悩みそのものが解決したわけでもなかったため、私はすっかりそのセミナーに参加する気持ちになっていたのです。

次の日曜日、私はセミナーの会場へと行きました。

そこには、思ったよりも多くの人が集まっていて、かなりの熱気を感じます。

100人以上はいたと思うのですが、今思うとその中にはすでに信者となっている人がサクラとして混じっていたかもしれません。

そして、予定時刻になると壇上に人が何人も登場し、話が始まりました。

教団の幹部がさまざまな話をしていき、その話に感心しながら聞いているうちに30分ほどが経過していて、とうとう教祖が登場しました。

教祖は、一見すると普通の中年男性です。

しかしその表情や動作の一つ一つが演出として計算されていたのでしょう。

その講話を聴いているうちに悩みそのものを忘れたような気分となり、教祖を信じる気持ちでいっぱいになったのです。

そして、帰りにはその教団に入信し信者としての心構えを聞くことになったのです。

それが、人生の転機でした。

信者としての活動は、毎日のお祈りとセミナーに参加する人の勧誘、および新規の信者を獲得することです。

特に、セミナーの参加者にはノルマがあり、また新規の信者をどれだけ獲得したかによって教団での地位が上がるようになっています。

上位になるということは信仰心の篤さを示すことといわれ、やる気を出したのは当然でしょう。

こうして、信仰の日々が始まったのです。

監修者コメント

武藤 英次

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コメント

新興宗教というのはさまざまなものがあり、中には立派な志を持った団体も存在するでしょう。
真剣に世界を救済する思いで人生を掛けて活動している方もいらっしゃいます。
しかし街頭で無差別に勧誘しているような新興宗教は、教祖や取り巻きの幹部が設けるための巧妙な詐欺であることが多いものです。
心が健康な状態であれば、そのような甘いワナにかかることも少ないでしょう。
しかし今回のケースのように「心のスキマ」が生じているときは、非常に危険な状態と言えるかもしれません。

なぜ、カードローンを利用しなくてはいけなかったのか?

教団に入信してから、毎日祈りを捧げることを欠かさずにいたのですが、祈りを捧げる像については教団への寄進によってグレードがあり、寄進が多ければ多いほど信仰心が届きやすい材質の像になる、といわれています。

入信時には小さな木彫りの像が無償でもらえるのですが、それでは信仰心が足りないように思った自分は、なけなしの貯金だった20万円を寄進して2段階上の金属製の像をもらいました。

これで祈りが届きやすくなると、毎日の祈りもますます熱心に行うようになったのです。

問題はセミナー参加者の勧誘

この時点で貯金はなくなりましたが、後悔はありませんでした。

ただ、問題となったのがセミナーの参加者を勧誘することです。

自分の家族は、日本の一般的な家庭と同じく、一応仏教徒ですがそれほど熱心ではないというタイプです。

新興宗教についてもあまりいいイメージを持っていないため、一緒に信仰しようといっても聞き入れてもらえず、反対にその宗教を辞めろと言ってくるほどです。

今思えば当たり前のことですが、当時の自分としては、せっかく見つけた救いの糸を断ち切られるような気がして、その忠告を頭から無視していました。

もちろんセミナーの参加も断られてしまい、親戚の中で参加したいという人は従兄弟一人だけであり、その従兄弟も一度だけセミナーに参加して終わりました。

次いでは大学の友人にも声をかけてみましたが、元々交友関係が広くないうえに、宗教の話をすると胡散臭く思われて距離を取られるようになってしまいます。

もはや勧誘する相手の心当たりがなくなり、とうとう自分が誘われたように街角で探すことにしました。

セミナー参加者を集うためにカードローンを利用することに

セミナーに勧誘する女性

街角で探すとなると、声をかけた後は話を聞くために喫茶店などに入る必要があります。

教団から聞いた話では、飲み物代をおごることで相手は借りができたように思ってしまうため、セミナーの参加をすっぽかすようなことが減るということだったので、喫茶店代は自分持ちになります。

そして、セミナーの参加者を10人集めるためには、話をする人数が50人はいないと難しいため、自分と相手を会わせて飲み物代が1回1000円としても、セミナーは毎月行われているので毎月5万円はかかることになります。

当時は仕送りとバイトで生活していましたが、生活費などを除くと毎月自由にできるお金は3万円から4万円ほどで足りません。

しかし、どうしてもセミナー参加者を増やして信者を獲得し、信仰の篤さを示したいと考えた自分は、より多くの人に声をかけるため、カードローンを利用するようになったのです。

学生の身分でカードローンが利用できるかは不安でしたが、アルバイトをしていたことと実家が持ち家だったことが功を奏したのか、上限を30万円として融資が受けられるようになりました。

これで、しばらくは喫茶店代を気にしなくて済むとほっとしたものです。

しかし、支出が収入を上回っている状態で、改善の見込みがないのですから、急場しのぎにしかなりません。

半年もすれば、借入金額は10万円を超えてしまいます。

そこに、追い打ちとなった出来事が発生しました。

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教団で作成しているネックレスの購入を勧められ…

寄進するためにキャッシングする女性

あまりセミナーの勧誘結果が芳しくないと相談したところ、教団で作成しているネックレスを勧められました。

制作過程で祈りが込められていて、自分の持つ力を最大限に発揮できるようになるため自信がつき、さらには幸運も味方するようになる、というキャッチフレーズで、12万円を寄進すればそれがもらえる、というものでした。

ただし、毎日敬虔に祈りを捧げていかなければ真の力は発揮されないので、最初は実感が薄いかもしれないが徐々にその力は強くなっていくと説明され、もちろん飛びつくようにその話を信じました。

寄進のためにカードローンから新たに借り入れて、ネックレスを手に入れたのです。

ネックレスは、言わずと知れた何の効力もないもので、せいぜい自己暗示くらいしか役に立ちません。

そのネックレスを付け毎日祈りを捧げながら勧誘を続けても、劇的な変化を望むことは無理でしょう。

ただし、自信がついたように思えたせいか、多少の勧誘成功率の上昇はありました。

当時の自分は、それをネックレスのおかげだと信じていましたね。

そして、もっと効果が高くなるようにとさらに寄進して数珠や置物などももらい、そのせいで支払いが滞り始めたころに2件目のカードローンへと手を出してしまいました。

借入額は合計50万円となり、無理な生活を続けて倒れてしまう

2件合わせて50万円を借りてしまったのですが、さすがに学生ではそれ以上の借り入れが不可能となりました。

返済のため、削れるところは削ろうと食費を最小限にして、同時にそれまで週4日ファミレスで夕方から深夜までアルバイトをしていたのに加え、深夜から明け方まで週2回の工事現場でのアルバイトをするようになったのです。

結果として、その生活を始めてから半年もしないうちに倒れてしまいました。

原因は過労と栄養不足です。

そして、入院していた病院に駆け付けた母の泣き顔を見て、目が覚めました。

自分がやっていたことの愚かさが身に染みて、それまでは最も大事だと思っていた信仰心も雪解けのように消えてしまったのです。

これ以上両親を悲しませないようにするために、もう教団を脱退することにしました。

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武藤 英次

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コメント

学生の身分でカードローンを利用するのは、プロの立場からはまったくおすすめできません。
真にやむを得ない事情があるのでは無い限り、高金利の借金に手を出すべきでは無いのです。
今回は新興宗教のグッズ購入ということで、冷静に考えれば借金をしてまでするものでは無いという判断ができるはずです。
しかし悪徳新興宗教にはオレオレ詐欺もびっくりするほど、巧妙なワナが仕組まれています。
高額な支払いがチラついたら、まず詐欺を疑ってかかる慎重さが必要です。

残った借金を返済する日々

教団の脱退については、引き留められはしたもののそれほど問題なく脱退することができました。

その教団も、数年後に起こった宗教がらみの事件以降は風当たりが強くなり、解散してしまったようです。

といっても、寄進という名目で支払ったお金が返ってくるわけでもないので、もはや関係ないといっていいでしょう。

そして、脱退した後に残されたのは寄進した結果もらったガラクタと、50万円の借金です。

ガラクタは本当に価値がないものでしかなく、借金についてはもはや親をこれ以上悲しませることはできないため、自力で返済することを心に決めました。

まずは返済計画をたてるところからスタート

脱退して返済のめどがついた女性

返済するとしても、また無理に働いて体を壊しては元も子もないので、まずは返済するための計画を立てるところから始めました。

返済の目標は大学を卒業するまでの1年半を目途として、それまでに毎月どれだけ必要か、そして卒業に向けてどれだけの単位が必要か、自由になる時間はどれだけあるかを書き出して、計算していきました。

幸い、宗教にハマっていた間も学校にはまじめに通っていたので、単位自体はそれほど必要ありません。

就職活動は行う必要がありますが、それを踏まえて日中を勉強の時間として、夜はバイトに精を出すことにしました。

幸いというかなんというか、宗教の騒ぎで友人の多くは関係を絶たれてしまったため、飲み会などの誘いもほとんどありません。

悲しいですが、バイトに専念することは可能です。

気を抜かずに努力した結果、3年の終わり頃には無事に内定を得ることができました。

借金も徐々に額を減らし、残りは40万円です。

4年になると、ほぼ卒論と週に数回の授業、ゼミくらいしか用事がないので、残りの時間の多くはアルバイトに専念することができます。

そうして8カ月後には、仕送り以上を親に頼ることなく、無事に借金を完済することができました。

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武藤 英次

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学生が50万円の限度額を設定されることは、現実にはほとんどありません。
総量規制という法により、年収の3分の1を超える借入は原則としてできないのです。(※一部例外をのぞく)
ちなみにアルバイトで50万円もの借金を返済していくのは想像以上に大変です。
汗水たらして稼いだお金がほとんど返済に消えて行くというのは、絶望感をともないます。
人生一度限りの学生生活を借金返済で消耗しないように気をつけたいものですね。

これからカードローンの利用を考えている人に

カードローンは、利用することで自分の望みが叶うこともあるかもしれません。

しかし、利用前に考えてほしいことがあります。

それは、そのお金の使い道が、果たして中身のあることかどうか、ということです。

自分の使い道だった宗教団体は、はっきりいって単なる張りぼてでしかないため、中身なんてまったくありません。ただ、そのお金を納めることで、一時の充足感を得るというだけでした。

それではいくらお金があっても際限なく吸い取られるだけで、足りることはないでしょう。

中身があるお金の使い方であれば、その金額には上限があり、一時的な損をしても見返りは得られるでしょう。お金を借りてまで今行う必要があるかどうかという点を考えなくてはいけませんが、無駄になることはありません。

実のところ、それ以降もカードローンを利用したことがあります。

英会話教室に通うときと、車の免許を取得するために教習所の費用を支払うためです。

しかし、どちらも自分のためになることであり、後悔はしていません。その返済も滞りなく終わりました。カードローンは、利用の仕方さえ間違わなければ便利なものだと思います。

利用の前には、慎重に考えて申し込みましょう。

監修者コメント

武藤 英次

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上記の例では再びカードローンを利用していますが、2回目以降では「前向きな理由」での借入と見ることが可能です。
同じ借金でも人生の役に立つ「良い借金」と、人生を苦しめる「悪い借金」があります。
前向きな理由があって借入し、計画的に返済できるのであれば、必ずしも借金は悪いものではありません。