生活福祉資金貸付制度の審査条件は?申込手順や注意点も解説
東本 隼之

この記事の執筆者

ファイナンシャルプランナー、マネーライター

東本 隼之さん

生活福祉資金貸付制度で貸付を受ける際は、申込条件を満たしたうえで社会福祉協議会の審査に通過しなければなりません。生活福祉資金貸付制度には、総合支援資金や福祉資金などのように資金用途に応じた種類があり、必要書類や申込手順が異なるので注意が必要です。

スムーズに貸付を受けるためには、どのような手続きが必要になるのかを確認しておくことが大切です。本記事では、生活福祉資金貸付制度の貸付対象者や申込手順を詳しく紹介します。貸付対象外になる人もまとめているので、ぜひ参考にしてください。

生活福祉資金貸付制度とは何?

生活福祉資金貸付制度とは

生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や高齢者、障がい者が安定的な生活を送れるように、資金の貸付や相談などの支援をする制度です。

これらの支援を通して、経済的自立や社会参加、在宅福祉を促進させることを目的としています。

生活福祉資金貸付制度には、次のようなメリットがあります。

  • 無利子または低利子でお金を借りることができる
  • 申込時から返済完了まで民生委員の相談支援が受けられる

無利子または低利子でお金を借りることができる

生活福祉資金貸付制度は、連帯保証人を立てることによって無利子で貸付を受けられる場合があります。連帯保証人が立てられない場合は「年1.5%」の利子が発生しますが、自動車ローンやフリーローンなどの融資と比べて低利子であることから利用しやすいのが特長です。

なお、後述する居住用不動産を担保にして生活費を借り入れる「不動産担保型生活資金」は、連帯保証人の有無に関わらず「年3.0%または長期プライムレートの低い方の利子」に設定されています。すべての貸付が無利子で受けられるわけではないので注意しましょう。

生活福祉資金貸付制度は無利子または低利子で貸付が受けられるので、返済時の負担を少しでも軽減したい人におすすめの制度です。

申込時から返済完了まで民生委員の相談支援が受けられる

生活福祉資金貸付制度では、利用申込から返済完了まで自治体の民生委員による相談支援が受けられます。民生委員とは、厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員のことをいい、地域の実情を理解している人が選ばれます。

民生委員の相談支援では、貸付対象者の自立を促したり、生活問題を解決したりするための総合的な支援が受けられます。生活福祉資金貸付制度が利用できるのか不安を感じている人は、ぜひ活用してみましょう。

生活福祉資金貸付制度は4種類ある

生活福祉資金貸付制度の4つの種類

生活福祉資金貸付制度は、資金用途によって以下の4種類に分類されます。

  • 生活費の補填:総合支援資金
  • 医療・介護費の補填:福祉資金
  • 子供の教育費の補填:教育支援資金
  • 家を担保に融資を受ける:不動産担保型生活資金

貸付資金ごとに返済期限や貸付利子が異なるので、それぞれの特徴を押さえておきましょう。

生活費の補填:総合支援資金

総合支援資金は、失業などで生活が苦しくなった低所得世帯に対して、生活の立て直しをするための貸付資金です。貸付可能額や貸付利子は、支援内容によって以下のように異なります。

資金種類 支援内容 貸付可能額 貸付利子
生活支援費 生活を立て直すまでに必要な生活資金の支援

複数世帯:月額20万円

単身世帯:月額15万円

※貸付期間は原則3か月(最大12か月まで延長可能)

連帯保証人あり:無利子

連帯保証人なし:年間1.5%

住宅入居費 住宅の賃貸契約を結ぶための敷金や礼金などの支援 40万円
一時生活再建費 就職のための技能習得費や、滞納している公共料金の支払いなどの生活再建に必要な一時的な支援 60万円

医療・介護費の補填:福祉資金

福祉資金は、低所得者や障がい者、高齢者が日常生活を送るうえで一時的に必要となった費用の貸付が受けられる制度です。貸付条件は、以下の通りです。

資金種類 支援内容 貸付可能額 貸付利子
福祉費 日常生活および自立生活を送るうえで必要となる技能習得費や住宅リフォーム費の支援

580万円

※資金用途によって上限額が変動する

連帯保証人あり:無利子

連帯保証人なし:年間1.5%

緊急小口資金 緊急かつ一時的に生活の維持が困難になったときの支援 10万円

緊急小口資金が利用できる状況としては、以下のケースが挙げられます。
  • 医療費の支払いで生活費が必要になった
  • 会社の休業や解雇によって生活資金が不足した
  • 盗難によって生活資金が必要になった

これらの理由があったとしても、今後の生活再建の目処が立っていなければ貸付対象となりません。生活資金が不足した場合は、自身が貸付対象になるのかを社会福祉協議会の窓口に確認してみましょう。

子供の教育費の補填:教育支援資金

教育支援資金は、高等学校や高等専門学校、大学へ進学したり入学したりするために必要な資金を貸付ける制度です。低所得世帯が対象とされ、以下の支援が受けられます。

資金種類支援費用 支援内容 貸付可能額 貸付利子
教育支援費 学校教育法で規定されている学校の就学に必要となる支援

高校:月額3.5万円

高専:月額6万円

短大:月額6万円

大学:月額6.5万円

※特例として認められれば「上限額×1.5倍」まで貸付可能

無利子
就学支度費 学校教育法で規定されている学校への入学に必要となる支援 50万円

就学者が貸付対象者になった場合は、世帯で収入がもっとも多い人が「連帯借受人」として、就学者と連帯して債務を負担することとなります。連帯借受人がいない場合は、連帯保証人が必要になります。

不動産所有:不動産担保型生活資金

不動産担保型生活資金は、所有している居住用住宅を担保に生活資金の貸付を受ける制度です。

不動産を担保として貸付資金には、65歳以上の配偶者と親以外の同居人がいない高齢者世帯が利用できる「不動産担保型生活資金」と、生活保護の受給中・受給しなければ生活ができない要保護世帯が対象となる「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」の2種類の貸付資金があります。

それぞれの支援内容は、以下の通りです。

資金種類 支援内容 貸付可能額 貸付利子
不動産担保型生活資金 住み慣れた住居に住み続けるための生活資金の支援

月額30万円

※貸付元本が担保土地の評価額の70%に達するまで

年3.0%、または長期プライムレートの低い利率
要保護世帯向け不動産担保型生活資金 住み慣れた住居に住み続けるための生活資金の支援

月額は生活扶助×1.5倍以内

※貸付元本が担保土地および建物の評価額の70%(集合住宅は50%)に達するまで

不動産担保型生活資金は、土地の評価額が1,000万円以上の一戸建て住宅を所有していなければ利用できません。要保護世帯向け不動産担保型生活資金では、土地と建物の評価額の合計が500万円以上でなければ貸付を受けられないので、固定資産税評価額などを参考にしながら事前に評価額を確認しておきましょう。

生活福祉資金貸付制度の審査基準・条件

生活福祉資金貸付制度の審査基準・条件

生活福祉資金貸付制度を利用する際は、資金用途や資産状況、返済の見込みなどから貸付するべきかを判断するための審査を受けなければなりません。これらの審査基準を満たせない場合は、貸付が受けられないことがあります。

審査に通るには、対象世帯に該当していることと、自治体の審査基準を満たしている必要があります。

まずは、以対象世帯に該当しているかを確認してください。

生活福祉資金貸付制度の対象者

  • 低所得世帯:資金貸付による生活再建が見込め、他から必要資金の貸付を受けることが困難な世帯
  • 障がい者世帯:身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた人がいる世帯
  • 高齢者世帯:65歳以上の高齢者がいる世帯

審査基準は公表していない自治体が多いため、自身が貸付を受けられる状態であるかは、社会福祉協議会の窓口で確認してみるのがよいでしょう。

貸付を受けなくても生活ができるお金があったり、制度内容と異なる資金用途を予定していたりする場合は、審査落ちする可能性があります。どの貸付制度を利用できるのかがわからない場合も、社会福祉協議会の窓口で確認してみましょう。

生活福祉資金貸付制度の対象外となる人の条件は?

生活福祉資金貸付制度の対象外となる人の条件は?

生活福祉資金貸付制度で定められている資金用途と目的があっていたとして、以下のような人は対象外となってしまう場合があります。

対象外となる人の条件

  • 民間の金融機関からの貸付が可能だと判断される人
  • 生活保護や失業給付金などを受けている人
  • 本制度の連帯保証人になっている人
  • 無収入で返済能力がゼロの人
  • 住居がない人

それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。

民間の金融機関からの貸付が可能だと判断される人

生活福祉資金貸付制度は、他からの貸付を受けることが困難な世帯に生活資金を貸付ける制度であるため、民間の金融機関からの貸付が可能とみなされると対象外になる場合があります。これは、生活福祉資金貸付制度が無利子または低利子で貸付が受けられるので、利子を目的とした利用ができないようにするためと考えられます。

たとえば、銀行の審査を通過しやすい安定収入がある公務員や会社員などが該当します。ほかにも、健康状態や年齢といった情報も考慮されるので、自身が貸付対象者に該当するかわからない場合は社会福祉協議会の窓口に確認してみましょう。

生活保護や失業給付金などを受けている人

生活保護や失業給付金などを受けている場合は、生活福祉資金貸付制度を利用することが基本的にできません。

なかには、生活保護を受けている高齢者世帯が受けられる「要保護世帯向け不動産担保生活資金」や、福祉事務所が必要と認めた場合に利用できる「教育支援資金」といった例外もありますが、基本的には利用できないと認識しておきましょう。

本制度の連帯保証人になっている人

すでに生活福祉資金貸付制度の連帯保証人となっている人は、貸付対象者と同等の債務を負うことになるため、自身を申請者とした貸付を受けることはできません。

また、社会福祉協議会が提供している介護福祉士修学資金等貸付制度や、ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業などの貸付制度を利用している場合も同様に対象外となります。ただし、不動産担保型生活資金と受験生チャレンジ支援貸付事業を受けている場合は、例外として貸付申請が可能です。

生活福祉資金貸付制度を利用する際は、自身が連帯保証人となっている制度がないのかを事前に確認しておきましょう。

無収入で返済能力がゼロの人

生活福祉資金貸付制度は、返済の見通しが立たない無収入の人や、返済能力がない人は基本的に利用できません。

生活福祉資金貸付制度は、貸付による支援であるため、貸付をすることで世帯への負担が大きくなったり、返済ができなかったりする場合は対象外となります。なお、預貯金がある場合でも、就労収入や手当などの収入がなければ、定期収入がないとみなされ、貸付が受けられない場合があります。

生活福祉資金貸付制度には、連帯保証人を立てる必要がなかったり、無利子で貸付が受けられたりする特徴がありますが、どんな状況でも貸付が受けられるわけでないことを認識しておきましょう。

住居がない人

生活福祉資金貸付制度のなかには、総合支援資金や不動産担保型生活資金などのように住居がなければ貸付を受けられない制度があります。

なお、住居がない状態であっても、自治体に住宅確保給付金の受給申請をしたうえで住宅を確保できる見込みがあれば貸付対象となります。住宅確保給付金の申請先は、自治体または委託団体になるため、居住予定の自治体に確認しておきましょう。

生活福祉資金貸付制度の申込手順

生活福祉資金貸付制度の申込手順

生活福祉資金貸付制度の申込手順は、以下の通りです。

生活福祉資金貸付制度の申込手順

  1. 自立相談支援機関に相談する
  2. 市町村の社会福祉協議会に借入申込書を提出する
  3. 審査に通れば借用書を提出する
  4. 受給と返済を行う

1.自立相談支援機関に相談する

生活福祉資金貸付制度のうち、総合支援資金や緊急小口資金での貸付を受けたい場合は、自立相談支援機関に相談しましょう。

自立相談支援機関とは、生活困窮者が抱えている就労や日常生活における課題を解決することを目的とした相談窓口のことです。令和5年4月時点で、全国907の福祉事務所がある自治体で1,381か所に設置されています。

自治体が直営しているケースと、社会福祉法人やNPO法人に委託しているケースがあるので、事前に居住している自治体に確認しておくことが大切です。

2.市町村の社会福祉協議会に借入申込書を提出する

自立相談支援機関で貸付が必要であると認められた場合や、福祉費や教育支援資金、不動産担保型生活資金などを利用する場合は、以下の必要書類を添えて社会福祉協議会に借入申込をします。

必要書類

  • 借入申込書
  • 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
  • 世帯全員が記載されている住民票(世帯主・続柄・本籍)
  • 世帯全員の所得証明書(学生を除く)
  • 連帯保証人の収入証明書および住民票

これらの必要書類は、資金の種類や社会福祉協議会によって異なる場合があるため、自治体が配布しているパンフレットなどを事前に確認しておきましょう。

3.審査に通れば借用書を提出する

借入申込書などの提出書類をもとに貸付の必要性を判断する審査が実施されます。審査期間は、申込み内容や社会福祉協議会によって異なり、1週間~1か月程度かかる場合があります。

社会福祉協議会による審査に通過すると貸付決定通知書、審査に落ちた場合は不承認通知書が届きます。貸付決定通知書を受領後は、借用書へ連帯保証人とともに自筆での署名・捺印をしたうえ、社会福祉協議会に提出しましょう。

借用書に署名捺印をした全員の印鑑証明書が必要になるので、自治体窓口などで事前に取り寄せておくと手続きがスムーズに進みます。なかには、郵送ではなく社会福祉協議会に直接提出しなければならない場合もあるので、申請先の手続きの流れを確認しておきましょう。

4.受給と返済を行う

借用書が受領されたら、指定口座に貸付資金が交付されます。資金種類や用途によっては、分割して交付されるケースがあるので、申込時に確認しておきましょう。

返済の開始時期は、資金種類によって以下のように異なります。

資金種類 返済開始時期(据置期間)
総合支援資金 生活支援費 最終貸付日から6か月以内
住宅入居費・一時生活再建費 貸付日から6か月以内
福祉資金 福祉費 貸付日から6か月以内
緊急小口資金 貸付日から2か月以内
教育支援資金 教育支援費・就学支度費 卒業後6か月以内
不動産担保型生活資金 ・不動産担保型生活資金
・要保護世帯向け不動産担保型生活資金
契約終了後3か月以内

返済が滞ると、延滞利子が発生したり、一括返済を求められたりするケースがあるので、返済が難しくなった場合は社会福祉協議会に相談しておきましょう。

生活福祉資金貸付制度についてよくある質問

生活福祉資金貸付制度についてよくある質問最後に生活福祉資金貸付制度に関するよくある質問を紹介します。

外国籍の人でも利用できる?

生活福祉資金貸付制度は、外国籍の人がいる世帯であっても利用できます。ただし、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

  • 特別永住者または一定の在留資格があること
  • 現在地に6か月以上居住し、永住する見込みがあること

連帯保証人は必須?

生活福祉資金貸付制度を利用する際は、原則として連帯保証人を立てる必要があります。連帯保証人を立てずに貸付を受けることもできますが、貸付利子が高くなる可能性があるので注意が必要です。

まとめ

生活福祉資金貸付制度は、低所得者や高齢者、障がい者が安定的な生活を送れるように、資金貸付や相談などの支援をする制度です。貸付を受けるには、社会福祉協議会の審査を通過しなければなりません。

必要書類や手続きの流れは、申請先の社会福祉協議会によって異なるので、事前に自治体のパンフレットなどで確認しておきましょう。